東急建設株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:寺田光宏)は、山岳トンネル工事が抱える「高水準な安全性確保」と「建設業の担い手不足」という社会課題の解決に向け、山岳トンネル施工支援システム技術である株式会社演算工房(本社:京都市上京区、社長:林稔)の「トンネル支保工誘導システム」(以下、本システム)とニシオティーアンドエム株式会社(本社:大阪府高槻市、社長:北俊介)の「3軸微調整機構付きエレクター」を導入しました。本システムを国土交通省中国地方整備局発注「令和5年度安芸津バイパス木谷トンネル工事」(広島県東広島市)で実証した結果、切羽[きりは]直下での作業員の立ち入りを排除し、安全性を向上させました。加えて、鋼製支保工[こうせいしほこう:地山の崩落を防ぐための鋼製の骨組み構造物、以下「支保工」という]の建て込み作業の人員を約40%削減※1しながら、オペレーターの熟練度に依存しない高精度な施工を実現しました。
1.開発の背景
山岳トンネル工事において、岩石の落下等(肌落ち)による重篤な労働災害のリスクは業界全体の課題です。特に、掘削後の地山が露出している切羽[きりは]付近での作業は、極めて高い危険性を伴います。支保工の設置作業は、この危険な切羽に極めて近接して行われます。
厚生労働省は、肌落ち災害の重篤度が高い現状を踏まえ、切羽への立ち入りを原則禁止し、自動化・遠隔化による安全確保を強く推奨しています。当社は、こうした社会的な要請と、深刻化する建設業界の労働人口の減少に伴う担い手不足に対応するため、人が危険に晒される機会を根本から排除する「自動化・省力化技術」として、本システムの導入を開始いたしました。
2.システムの特長と実現した安全性・生産性の向上
本システムの導入は、施工現場に大きな変革をもたらしました。従来、作業員が切羽で行っていた合図を遠隔・デジタル化することで、施工の省力化に成功し、安全性の向上、精密な品質管理、そして生産性向上のすべてを高い次元で実現しています。
(1)安全・品質確保の飛躍的な改善
従来の工法では、支保工の正確な設置位置を確認するため、計測や誘導を担当する作業員が簡易定規や測量機を使用し、切羽直下の左右の足元という最も危険な場所に立ち入って重機オペレーターに合図を送る必要がありました。当社が導入した本システムは、支保工に設置したプリズムを自動追尾式トータルステーションで計測し、その設計位置と実測位置の差異の情報を、重機オペレーターが運転席のモニターでリアルタイムに直接確認(見える化)できるようにしました。この仕組みにより、正確な計測・誘導のために危険箇所に作業員が立ち入る必要性を排除することができ、作業の安全性が大幅に確保されました。
また、支保工の設計位置と実測位置の差異の見える化と、エレクター(支保工を把持する機械)の3軸微調整機構の組み合わせにより、熟練度によらず高精度な設置が可能となりました。これにより、自主管理基準を満たす支保工建て込み精度(鉛直・横断方向0~30mm、縦断方向±30mm以内)が確保されました。支保工建て込み作業における高精度な施工は、トンネル構造物全体の安定・信頼性を高める結果に繋がります。
(2)生産性の向上
建設業界の担い手不足対策として不可欠な省力化においても、以下の具体的な成果が得られました。従来、簡易定規の保持と合図のために必須だった計測・誘導を担当する作業員2名を削減することができました。これにより、支保工建て込み作業における人員を約40%削減する効果が確認されるとともに、作業スピードが約20%アップしたことで生産性向上に寄与しました。
3. 今後の展望
当社は、注力している山岳トンネル工事において、安全・品質確保や生産性向上に資する自動化・省力化技術の獲得と実用化を推進していきます。
開発・実証した「トンネル支保工誘導システム」と「3軸微調整機構付きエレクター」の効果と知見を基に、今後も同様のトンネル工事において本技術を積極的に展開していく方針です。
当社は、継続的な技術開発を通じて、人が危険な作業環境にさらされる機会を減らすことにより、持続可能で安全な建設業の実現に貢献してまいります。
※1 標準5名(OP1名、マンゲージ2名、足元2名)を3名(OP1名、マンゲージ2名)で実施