東急建設株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:寺田光宏、以下東急建設)、株式会社ムスカ(本社:東京都中央区、社長:串間充崇、以下ムスカ)および、トータルケア・システム株式会社(本社:福岡市博多区、社長:長武志、以下トータルケア・システム)は、使用済み紙おむつ由来の成分を活用したオーガニック培養土等生産(以下、本事業案)「地球動物園」について、事業化に向けた共同研究を開始したことをお知らせします。
本事業案は、東急建設の新規事業アイデアコンテスト「MOON SHOT CONTEST(ムーンショットコンテスト)」 で選出された事業アイデアであり、使用済み紙おむつを原材料としてオーガニック培養土や緑化基盤材を生産する事業です。これまで東急建設社内で検討を進めていましたが、このたび、昆虫を活用した有機廃棄物処理技術を有するムスカ、および、使用済み紙おむつのリサイクル技術を有するトータルケア・システムの知見を活用した共同研究を開始し、2026年度までに事業化を目指します。
■背景
使用済み紙おむつは、その大半が焼却処分されています。焼却処分においては、水分を多く含み焼却しづらいためCO2排出量が増えることが指摘されています。近年、高齢化の進展に伴い、紙おむつの生産量・使用量は増加傾向にあり、環境省の推計では、2030年度の使用済み紙おむつ廃棄量は260万トンとなり、一般廃棄物処理量に占める割合は約7.0%まで高まるとされています。これらの使用済み紙おむつを処理するにあたり、いかに環境負荷を低減するかが課題となっています。
今回の事業案では、回収した使用済み紙おむつを水溶化処理により、焼却処理と比較し、CO2排出量の削減効果が見込まれています。また、処理過程で発生する汚泥を脱水処理後、イエバエによる有機廃棄物の消化処理技術等を加えることで、生成された有機肥料を原料にオーガニック培養土や、緑化基盤材の元肥を生産する事業案です。
■「地球動物園」の名称について
本事業案の名称である「地球動物園」は、社会課題となっている使用済み紙おむつの回収から、汚泥処理を経て生産されたオーガニック培養土などを使用した緑化までの一連のプロセスの総称として名付けられました。
また、本事業案は、「廃棄物を活用した緑化事業」をコンセプトとしており、地球規模で深刻化している砂漠化の進行緩和を目指す事業として「地球」というフィールド全体で廃棄物が有効活用され、芽吹く植物とそこで暮らす「動物」への想いを表現しています。
■共同研究の概要及び3社の役割
事業化に向け、使用済み紙おむつを水溶化処理し発生する汚泥をイエバエによる処理技術の活用により有機肥料に再資源化する技術の研究を共同で行います。一般的にオーガニック培養土や、緑化基盤材の原料となる有機肥料は、通常6ヶ月程度の発酵期間が必要ですが、本事業案は培養したイエバエを活用することで、生成期間を約7日まで大幅に短縮する効果が見込まれます。
東急建設は、生産された有機肥料の検証(植物育成等)試験、培養土化の実証実験、事業場所の選定および生産施設設置に向けた準備を行います。
ムスカは、昆虫処理技術に関する知見を活かして肥料化における最適条件の抽出・検証を行います。
トータルケア・システムは、保有している独自の紙おむつリサイクル処理技術を活用し、有機肥料の原材料となる汚泥の品質向上研究を行います。
なお、本件共同研究で得られた成果については、土壌・有機性廃棄物の有効利用を専門分野とする秋田県立大学生物資源科学部 石川祐一教授による検証を予定しています。
■今後の展望について
本件共同研究を足がかりに、本事業案を2026年度に事業化することを目標としています。
本事業案で生産されたオーガニック培養土や、緑化基盤材を使用して、当社が緑化工事を施工可能となるなど、当社の本業である建設事業とのシナジー効果も想定しています。
※「地球動物園」は、東急建設株式会社の登録商標です。(商標登録番号第6753112号)
■株式会社ムスカ
株式会社ムスカは、昆虫(イエバエ)を利活用し、家畜排泄物や食品加工残渣、汚泥等の有機廃棄物を、環境負荷の少ない方法で、短時間で同時に有機肥料と昆虫タンパク飼料に再資源化する技術とノウハウを保有しています。
これらの技術とノウハウを活かし、様々な有機廃棄物から高付加価値な資源を生み出すバイオマス・アップサイクルシステムの事業化を進め、環境対応と経済性を両立させた、新たな価値・機能・サービスを提供することで、「食」を通した循環型経済の構築と、持続可能な社会づくりに広く貢献してまいります。
所在地 :〒103-0023 東京都中央区日本橋本町3-8-3-8F
■トータルケア・システム株式会社
2004年、福岡県大牟田エコタウン内に、水溶化処理による紙おむつリサイクルプラント「ラブフォレスト大牟田工場」を竣工し、2005年より事業を開始。世界的にも例が少ない紙おむつのリサイクルシステムを国内ではじめて構築しました。現在では医療機関・福祉施設や周辺自治体の一般家庭から排出される年間約5,000トンの使用済紙おむつをリサイクルしています。使用済紙おむつを焼却せずにリサイクルすることでCO₂排出量を約37%削減することができます。所在地 :〒812-0881 福岡県福岡市博多区井相田1-10-40