東急建設株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:寺田光宏、以下「当社」)は、大阪大学大学院工学研究科の矢吹信喜教授の研究グループと、中立でオープンなBIMモデルの仕様であるIFC ※1と熱流体解析などを行う数値流体力学シミュレーター(以下「CFD ※2」)を連携させる手法を共同開発しました。今後、この手法を建物OS「Building OS ※3」に組み込むことで、建物OSの機能を向上させ、早期社会実装を目指します。
今回開発したのは、BIMモデルの仕様であるIFCに温熱環境に係るパラメータを反映させるプロパティセットを新たに設計し、各種パラメータを含んだIFCファイルからCFDに必要な情報を抽出する仕組みです。ISOで標準化されている国際規格のIFCを活用することで、特定のBIMモデル作成ソフトウェアに依存せずにCFDと連携することが可能となります。
今後、この手法を建物OS「Building OS」に組み込むことで、例えばセンサが設置されていない場所の温湿度を推定する、30分後の温熱環境の状態を予測して先読み的に空調を制御するなど、これまで困難だった室内環境制御の実現を目指してまいります。
【連携手法の概要】
1. BIMモデル作成ソフトウェアを用いて、CFD解析に必要な各種情報を入力しIFCファイルに出力
2-1.幾何情報抽出プログラムを用いて、IFCファイルから部屋の形状等の幾何形状を自動抽出
2-2.専用ソフトウェアを用いて、CFD解析用メッシュモデルを作成
3. プロパティ抽出プログラムを用いて境界条件を自動抽出
4. メッシュモデルと境界条件をCFDシミュレーターに設定
今回の研究成果は2023年7月19日~21日にタイ・バンコクで開催される国際会議 International Conference on Civil and Building Engineering Informatics (ICCBEI 2023 ※4)で発表する予定です。
当社では、長期経営計画"To zero, from zero."において、「脱炭素」を提供価値の一つに、「デジタル技術」を競争優位の源泉に位置づけ、BIMをプラットフォームとした環境負荷低減の取り組みを推進しています。
今後も引き続き、建物の設計情報であるBIMとリアルタイムに取得するセンサデータを統合して建物のデジタルツインを構築し、建物OSの早期社会実装を目指します。また、これにより、社会全体のエネルギー使用量削減や環境負荷低減、建物利用者のWell-beingの実現に貢献してまいります。
※1 IFC(Industry Foundation Classes)
IFCは、建物を構成する全てのオブジェクト(壁、柱、窓、ドアといった構成要素)の3次元の形状情報と属性情報を保有し、BIMソフトウェア間におけるデータの共有化を容易にする中立でオープンなデータモデルのファイル形式で、ISO(International Organization for Standardization)で標準化されている国際規格。
※2 CFD(computational fluid dynamics)
数値流体力学。コンピューターを用いて流体の運動に関する方程式を解き、熱流体解析などを行う
※3 Building OS
当社と大阪大学大学院工学研究科が2023年4月に共同開発した建物OS。建物OSとは、センサで読み取った室温やCO₂濃度等のデータを活用し、快適かつ省エネな空調・照明の自動調節や、建物内で働くロボットの制御を可能にすることで、建物の環境価値と生産性の向上に貢献するデジタルプラットフォーム。
※4 参考URL:https://civil.eng.chula.ac.th/iccbei2023/
【関連リリース】
建物デジタルプラットフォーム「Building OS」を 大阪大学と共同開発し、技術研究所で実証