東急建設株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役:寺田光宏、以下「当社」)は、杭施工において、デジタル技術を活用したコンクリート打設管理装置(以下「当装置」)を開発し、場所打ちコンクリート杭※1の品質確保に必要なコンクリート天端高さ※2の計測業務を効率化しました。
当装置は、先端に錘を付けたワイヤーや自動巻取り装置などで構成され、打設中のコンクリート天端高さを随時自動計測します。また、生コンクリートを流し込むトレミー管※3の挿入深さも同時に計測し、適時適切にトレミー管を引き抜くために重要な情報を入手することができます。計測データは関係者間でリアルタイムに共有されるため、杭の施工管理における業務効率化が実現しました。
杭工事は、一つの見落としや計測ミスが重大な品質事故に繋がることから、近年その品質管理基準が高まっています。それに対応するため当社では、杭工事専門会社の技能労働者と当社社員による現地での複眼チェックを行っていますが、相応の負担がかかること、さらには杭施工の管理は技能労働者の経験やノウハウへの依存度が高いことから、管理業務の効率化や標準化を課題と認識してきました。
当装置により、計測されたデータがリアルタイムで遠隔地にも共有されることから、現地で複数人によるチェックを行う必要がなくなり、事務所や店社からのリモート管理が可能となります。さらに、これまでは技能労働者による目視・手作業を頼りに行ってきた管理業務が自動化されたことにより、経験が浅くても計測ができるようになりました。
当社の建設現場で行った性能検証実験では、当装置を用いてコンクリートの天端高さが問題なく計測され、経験の浅い技能労働者でも扱えることが確認されました。一方で、自動巻取り装置のコンパクト化などの改善点も明らかになりました。
※1 場所打ちコンクリート杭:現場で地盤を掘削しコンクリート打設して製造する鉄筋コンクリート造の杭。
※2 コンクリート天端高さ:打設中のコンクリートの一番高い部分の高さ。
※3 トレミー管:杭施工時に使用する、コンクリートを流し込んで底部から打設するための管。
今後当社では、より直感的に打設状況が分かるようなWebアプリの開発を進め、それを用いた現場実証を進めていきます。また、杭施工に関して、孔壁測定管理装置など別の管理技術を並行して開発しており、それらを統合した管理システムを、早ければ来年度中に社内で水平展開できる見込みです。
建設業が提供する製品は、直接のお客様だけでなく様々な方が数十年にわたり利用する社会インフラです。当社は、その社会的責任を果たすため、今後も品質管理を重視し、デジタル技術をはじめとした最新の技術を取り入れた業務改善に取り組んでまいります。
【当装置の構成と取り付け方法】
- 当装置は、先端に錘を付けたワイヤー、自動巻取り装置・制御盤、分離式アーム、トレミー管計測金具で構成されます。
- 各器具は下記の通り取り付けます。
・自動巻取り装置および動作をコントロールするための制御盤を開口部の外に設置
・錘の吊り下げ位置を調整する分離式アームをスタンドパイプ※4に取り付ける
・トレミー管計測器具をトレミー管に取り付ける
・先端に錘を付けたワイヤーを各器具に通し、孔底※5から一定の高さに錘を垂らす
※4 スタンドパイプ:杭施工のため掘削した穴に挿入するパイプ。表土の崩壊を防止するために用いられる。
※5 孔底:杭施工のために掘削した穴の底。
【当装置の使用方法】
- 自動巻取り装置により、錘付きワイヤーの巻き上げ&巻き下げを一定間隔で繰り返します。
- 孔底から徐々に充填される生コンクリートに巻き下げられた錘が接触した時、それをセンサーが読み取り、コンクリート天端高さが計測されます。
- また、巻き上げ&巻き下げの動作を一定回数実施するごとに一度、錘がトレミー管計測金具に接触する高さまでワイヤーを一気に巻上げることで、その接触をセンサーが読み取り、トレミー管の挿入深さを計測します。
- これらの動作はセンサーが読み取った値で常に自動で制御され、また、計測データはタブレット端末やパソコンなどにリアルタイムで自動転送されます。