中高層木造建築構法「P&UA構法」が日本建築センターの個別評定を取得
東急建設株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:寺田光宏、以下当社)は、株式会社市浦ハウジング&プランニングを代表とする「P&UA(※1)構法共同技術開発グループ」(※2)に参加し、参加各社と共に本構法の開発を進めてまいりました。そしてこの度、同グループによる本構法を用いて作成した10階建て共同住宅のモデルプランが、一般財団法人日本建築センターの評定を2022年10月14日に取得しました。
本構法は、一方向ラーメン構造と耐力壁を木造で架構するもので、新たに開発した「GIUA(※3)」と「シアリングコッター耐力壁」を用いることで、高耐力・高剛性・高靭性を実現します。
(※1)Panel & Unbonded Anchorの略称
(※2)技術開発者:㈱市浦ハウジング&プランニング、㈱織本構造設計、東急建設㈱、戸田建設㈱、東レ建設㈱、西松建設㈱、㈱長谷工コーポレーション、三井住友建設㈱
共同研究者:京都大学 五十田教授、近畿大学 松本准教授、広島県立総合技術研究所林業技術センター
協力者 :アルファ工業㈱、内田技建、㈱ウッドワン、エイコー㈱、㈱河本組、桜設計集団、㈱中東、藤田K林産技術士事務所、銘建工業㈱ (以上、五十音順)
(※3)Glued in Unbonded Anchorの略称
【個別評定を取得した10階建て共同住宅のイメージパース】
■開発の経緯
現在、我が国ではSDGsやESG投資の拡大を背景に中高層木造建築への関心が高まっています。これまで木造では、構造設計ルート1又はルート2(許容応力度設計)でほぼ全ての建物が設計されてきました。一方で、中高層木造建築物でルート3(保有水平耐力),Ds=0.3を実現した構法はなく、加えて本構法に限らず対象規模となる木造の構造性能は十分に検証されておらず、構造設計手法は確立されていません。また、木質材料全般の課題として、脆性破壊を防止する靱性の確保、荷重変形関係のスリップ防止、接合部の高い曲げ剛性と耐力の確保などが課題となっていました。
そこで、当技術開発グループでは、これらの課題を解決する新たな構法となるP&UA構法の開発に着手し、10階建て共同住宅に鉄筋コンクリ-トスラブを採用し、ルート3,Ds=0.3で設計したモデルプランにおいて、日本建築センターの評定を取得しました。
■P&UA構法の特徴
本構法は、新たに開発をした「GIUA」と「シアリングコッター耐力壁」の2つの技術を用いた構法です。
①「GIUA」(㈱市浦ハウジング&プラニングによる特許出願済)
中大規模木造で一般的な鋼棒挿入接着接合であるGIR(Glued-in Rod)に、鋼棒をあえて接着させないアンボンド部分を設けた接合構法です。このアンボンド部分により、従来のGIRで生じていた脆性的な木材割裂を抑え、大変形時まで木材を損傷させずに鋼棒が伸び縮みすることでエネルギーを吸収する機構となっています。
工場で柱・梁の木材端部にGIUAを施工しておき、現場ではこの柱・梁を鉄骨のパネルゾーン(柱梁のジョイント部分)にボルトを用いて緊結するだけであり、施工の省力化が図れます。
②「シアリングコッター耐力壁」(㈱市浦ハウジング&プラニング、㈱織本構造設計による特許出願済)
LVLやCLT等の木質パネルを上下に並べ、パネル間に設けた切り込みにL型に折り曲げ加工した鋼材(コッター)を組み合せ差し込んで接続した耐力壁で、建物フレームとは鉄骨プレートとボルトにより接続します。
地震時には、上下の木質パネル間で2枚の耐力壁パネルがスライドしようとするため、パネル間に差し込んだ鋼製コッターが変形することにより、地震による力(地震エネルギー)を吸収します。大変形時まで木質パネルを損傷させず、コッター部分が変形してエネルギー吸収する機構となっているため、一般の木質耐力壁に比較して優れた変形性能とエネルギー吸収性能を有しています。
【構造評定を取得した架構のイメージ図】
【実大実験の様子(左:GIUA、右:シアリングコッター耐力壁)】
■今後の展開
2030年を目標とする東急建設グループの長期経営計画では、「脱炭素」「廃棄物ゼロ」「防災・減災」を3つの提供価値として、経営の軸に定めています。そのうち「脱炭素」については、中大規模木造木質建築を推進することを戦略の一つに掲げ、木造木質ブランド「モクタス」を展開しております。
本構法は、中大規模木造建築物の設計施工を推進するうえで必要な技術であり、「モクタス」ブランドのラインナップに加えることで、さらなる展開を進めてまいります。
2025年には、新耐震基準以前の建築が築45年を迎え、都市部における中小規模ビルの建替ニーズが高まると考えられ、国内での木材利用の促進・普及に向けた動きが求められるなか、昨今の環境配慮への社会意識の高まりから、木造木質化への建替需要の増加が想定されます。
当社は、今後お客様の期待にお応えできるよう、本構法の採用実績を積むとともに、他の建物用途への展開も視野に入れ取り組んでまいります。