水分摂取と深部体温の上昇に着目した、複合型の熱中症予防システムを現場検証
東急建設株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:寺田光宏、以下当社)は、建設現場における熱中症災害ゼロを目指し、技能労働者の水分摂取量および摂取回数と、深部体温の上昇に着眼した熱中症予防システム開発のため、今夏に首都圏と九州の作業所にて有効性の検証※1を行いました。
本システムは、水分摂取に関する九州大学大学院工学研究院の野上大史助教の知見と、深部体温測定のノウハウを有するミツフジ株式会社のウェアラブルデバイスを組み合わせて構築するものです。
水分摂取の検証では、市販の水筒にセンサ内蔵の計測器を装着※2します。加速度センサにより摂取量および摂取回数の計測を行い、温度・湿度センサによって現場内の局所環境情報を取得することで、実験協力者個々の作業環境を把握しました。
また、深部体温については、腕時計型のデバイス「hamon band」※3を着用した実験協力者の脈波から、上昇の度合いを計測しました。
今回の現場検証では、水分摂取と深部体温上昇の関連性の検証や、バイタルセンシング※4による予防策の検討、さらには腕時計型デバイスの常時装着が作業を阻害しないか等の点を調査しました。
【センサ内蔵の計測器を装着した水筒の使用状況】 【腕時計型のウェアラブルデバイスの装着状況】
気候変動の影響により熱中症災害の危険性が高まる中、当社では、2010年より熱中症発症の兆しである「バイタルサイン」を検証し、未然に防ぐ能動的予防技術の開発に取り組んできました。その経験から、従来の単一要素ではなく、複数要素を組み合わせた予防が有効であるとの結論に至り、中でも対策効果が期待できる水分摂取と深部体温に着目し、今回の検証を行いました。また、建設現場では技能労働者個々が水筒を常備する習慣があまりないため、その行動変容を促すことも本検証の狙いのひとつです。
今後は、本検証によるモニタリングデータを分析し、水分摂取や体温上昇のアラート情報を表示するソフトウエアの開発を進めるなどして、2023年には数件の建設現場に試験導入する予定です。
将来的には別要素の組み合わせや建設業以外での適用も視野に、引き続き開発・検証を行います。当社は、熱中症災害ゼロの実現とより安全安心な職場環境づくりに積極的に取り組んでまいります。
【複合型の熱中症予防システム実用化イメージ】
今後はスマートフォン等を介した危険性の自動アラート技術の開発を進める。
将来的には水筒センサと腕時計型デバイス以外の要素も組み合わせたシステムの開発を視野に入れる。
※1 首都圏と九州の作業所における有効性の検証について
・8月上旬/福岡市中央区のオフィスビル建築作業所/実験協力者6名(実際に働く技能労働者)
・8月下旬/東京都千代田区のマンション建築作業所/実験協力者10名(実際に働く技能労働者)
・検証結果の特定は本年11月を予定
※2 水筒にセンサ内蔵の計測器を装着
国立大学法人九州大学大学院工学研究院の野上大史助教、株式会社GM3が開発。
・加速度センサ、温度・湿度センサ内蔵の計測器
・水分摂取のため水筒を傾ければ加速度センサが検知し摂取回数を計測
・また、傾けた時間と水筒の寸法より摂取水分量も算出可能
・水分摂取情報を見える化、共有化することで、飲水行動を促進
・温度・湿度センサにより、水筒の置かれた局所環境を取得でき、実験協力者の作業環境(摂取場所の環境)を知る
ことが出来る
・その情報により環境の改善(送風機の重点設置場所など)が可能
・水筒の常備促進にもつながり、プラスチックごみの削減にも寄与
※3 腕時計型のデバイス「hamon band」(ハモンバンド)
ミツフジ株式会社(本社:京都府相楽郡、社長:三寺歩)が開発・販売。
・正確な心拍情報をセンシングしてデータを解析する技術を元に、暑熱環境下で深部体温の上昇変化を
推定するアルゴリズムを搭載
・アルゴリズムは2年にわたり産業医科大学と共同開発
・スタンドアロン型で通信や難しい操作が不要
・手首に着けるだけで着用者本人のバイタルデータから3色のLEDと振動で暑熱リスクを未然にお知らせ
※4 バイタルセンシング
人の心拍数や血圧、体温、目の動きといった、生きている証(バイタルサイン)を計測する技術