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技術研究所電磁環境実験施設に磁場発生実験装置群を整備
環境磁場を再現し建物の設計に反映
1999.06.07

東急建設鰍ヘこのほど、神奈川県相模原市内にある電磁環境実験施設に、各種の磁場発生実験装置を整備しました。
この施設は、電磁気的環境問題の対策技術を広範囲かつ総合的に実験できる特長を持ったものです。磁場に影響を及ぼす鉄筋や鉄骨を一切使わずに建設した実験棟と、様々な環境磁場を再現する磁場発生実験装置群により、磁場の乱れがなく、高精度かつ効果的な実験データを得ることができます。
この施設を使って環境磁場を再現することにより、磁場の影響を建物の設計に反映させることが可能になりました。また各種設備機器から発生する磁場の計測や、大型設備機器などを環境磁場の中で稼動させたときの動作確認など、多様な実験が可能であり、各方面からの要望に広くお応えできるものと考えています。


【キーポイント】

■環境磁場を再現し設計に反映
■大型設備機器の磁場特性試験が可能
■建物による磁場の乱れが生じない環境を実現
■高精度かつ効果的な電磁環境実験が可能
■5m立方の大型1軸ヘルムホルツコイルを設置


【開発の背景】

近年、大きな発展を遂げた電気・電子応用技術は、現代社会を動かす基盤技術となっています。しかし一方で、各種電気・電子機器や情報通信機器などの普及にともない、これらの機器から発生する電磁気が相互に干渉し、施設や機器が本来の機能を十分に果たせなくなるといった「電磁環境問題」が新たな課題となりつつあります。
こうした問題に対処するためには、躯体、設備、設計、施工の技術を総合的に組み合わせて電磁気的環境を制御し、建物全体あるいは部屋毎に、電磁気による障害を防止する「電磁気環境対策技術」を開発・適用していくことが必要です。


【開発の経緯】

当社では、電磁気的環境問題を解決する技術が21世紀に向けての建築における基盤技術となることを予測し、早くより研究開発体制を整備してきました。
当初は、病院の検査室を対象に検査機器を電磁ノイズから保護する電磁波遮蔽技術の開発からスタートしましたが、現在では、磁場の周辺環境への影響調査と対策方法の開発や、電磁石を使用した揚重機器やスタッド溶接により鉄骨および鉄筋が永久磁石となってしまう着磁の障害調査と対策技術の開発など、広い範囲にわたる研究開発を行うようになりました。
平成10年4月には相模原市内に磁気や電磁波に干渉しない特殊な建物である電磁環境実験施設の実験棟を建設し、今回、新たに様々な磁場環境を再現することのできる各種の磁場発生実験装置群を整備しました。


【目的】

近年、建物の内外にある様々な磁場発生源からの磁場によって、私たちの身近にある電気・電子機器、精密機器などが影響を受けることがあります。磁場発生源は、建物の外の広い範囲に磁場の影響を及ぼすものであったり、また建物内の設備機器であったりと原因は様々ですが、私たちの生活空間において磁場の影響を避ける必要がある場合には、建物の計画の段階から対策を講じることが有効といえます。しかしそのためには、各種の磁場発生源から発生する磁場の大きさや分布などをあらかじめ調べて予測したり、また予測した磁場によってどのような影響が考えられるかを、実験的に確認しておく必要があります。

今回、当実験施設に様々な磁場環境を再現することができる磁場発生実験装置群を整備することにより、環境磁場の影響を実験的に確認することができるようになりました。例えば、それぞれの環境下で使用する設備機器の磁場特性を調べたり、磁場障害の発生状況の確認やその対策技術の検討に活用したりすることができます。また、大型の設備機器について、環境磁場中に設置した場合の動作を機器の作動状態で確認する磁場特性試験を行ったり、長期間にわたり環境磁場にさらされる機器や試験対象物への磁場の影響を調べたりすることが可能です。さらに、これらの実験から得られたデータをもとに、建物の計画段階で、磁場の影響を受けないようにするための対策を設計に反映させることも可能となりました。

当実験施設には、磁場に影響を与えない建物(実験棟)があり、この内部で各種の設備機器などから発生する磁場分布を計測することができます。当実験施設の特長を生かした各方面からの施設利用の要望に対しても、広く対応していきたいと考えています。



【特長】

今回整備した磁場発生装置群には、これまでにはなかった特長があります。従来から多く用いられている磁場発生装置は、例えば3軸ヘルムホルツコイルの場合を例にとると、以下のような制約がありました。
・ コイルを設置した部屋の床や壁・天井内の鉄筋が磁場の分布を乱し、誤差が生じた
・ 磁場の特性を調べる試験対象物の大きさがコイルの大きさによって決められるため、大型の設備機器について磁場特性試験を行う場合、設備機器を構成する個々の小型部品毎に試験をする必要があった
・ 磁場の発生範囲が数m以内の狭い範囲でしか再現できなかった
・ 発生磁場が一様であるため、磁場の分布に濃淡がある場所での特性試験は困難であった
本実験施設の磁場発生装置群は、目的に応じた使用により、以下の特長を生かすことができます。
・ 3軸ヘルムホルツコイルは磁場に影響を与えない建物(実験棟)内に設置してあるため、室内で磁場が乱されることなく高精度の磁場特性試験を行うことができる
・ 大型1軸ヘルムホルツコイルは大型設備機器などの磁場特性試験を稼動状態で行うことができる
・ 大型ペアコイルは磁場の分布に濃淡がある場所を想定した長期にわたる磁場特性試験を行うことができる
・ 架空コイルは広い範囲で磁場の分布に濃淡がある場所を想定した磁場特性試験を行うことができる


【施設概要】

当実験施設の磁場発生装置群は、3軸ヘルムホルツコイル、5m立方の大型1軸ヘルムホルツコイル、大型ペアコイル、架空コイルから構成されており、それぞれ以下の特長を持ちます。
■3軸ヘルムホルツコイル
鉄筋を使わない建物(実験棟)の中に設置した2.2m立方の3軸ヘルムホルツコイルで、一様な磁場をコイル内部で自由な方向に発生させることができます。3軸ヘルムホルツコイル自体は従来から各方面で使われていますが、コイルをとりまく建物の鉄筋によって磁場が乱される場合がありました。こうした影響を取り除くために、装置は磁場に影響を与えない建物(実験棟)の中に設置してあります。 コイルを設置した建物は、配筋材に高機能繊維補強筋のひとつであるアラミド筋を採用しており、鉄筋を一切使っていません。また、扉などの開口部を木製とし、窓枠にはプラスチックサッシュを用いるなど、建物が磁場に影響を与えないように配慮してあります。そのため、小型設備機器などの磁場特性試験を、より高い精度で実施することができるようになっています
■大型1軸ヘルムホルツコイル
一辺5mの大型1軸ヘルムホルツコイルで、水平方向の一様な磁場をコイル内部に発生させることができます。従来実験室内で汎用されてきたヘルムホルツコイルに比べて一辺が5mと大型であるため、大型の設備機器に対しても、機器を稼動させた状態で磁場に対する特性試験を実施することができます。従来は、大型の設備機器を環境磁場の下で使用する場合の性能を調べるのに、機器を構成する個々の小型部品ごとに磁場特性試験が行われていました。この大型1軸ヘルムホルツコイルを使用することによって、設備機器の各部品を同時に稼動させた状態での磁場特性試験が可能になります。将来、大型の設備機器が様々な磁場環境の下に使用される場合が増え、磁場中での機器の性能を調べる磁場特性試験が、さらに多く求められることが予想されます
■大型ペアコイル
一辺5mの大型正方形コイルを2つ一組のペアで使用し、13m離れたコイルの間に非一様な水平磁場を発生させることができます。これにより、大型設備機器の磁場特性を部分ごとに把握したり、磁場分布が一様でない場所で長期にわたって使用する機器の磁場特性を調べるための試験が可能です。コイルのペアは、試験が長期にわたっても天候に左右されずに継続できるように、磁場に影響を与えない建物(実験棟)を挟み込むように配置されており、建物(実験棟)の中に試験対象物を設置するようになっています
■架空コイル
一辺16m、高さ10mの水平な正方形コイルで、コイル周辺10m程度の広い範囲に非一様な磁場を発生させることができます。これにより、屋外の磁場発生源から離れるほど小さくなる磁場を想定した対策技術の開発などが可能となっています


【施設の仕様】

03_01 03_02
磁場に不干渉な特殊な実験棟と
屋外の磁場発生装置群
実験棟内3軸ヘルムホルツコイル
による磁場印加試験

・3軸ヘルムホルツコイル(小空間一様磁場再現装置):コイル形状:1辺2.2m、 正方形コイル、コイル間距離 2.2m、周波数特性:DC〜100Hz、最大磁束密度:200μT(実効値)(コイル間中央)
実験棟の中に設置して自由な方向の一様磁場を発生させることで、コンピュータやオフィス機器などの小型装置を対象にした磁場特性試験を行います。 ・大型1軸ヘルムホルツコイル(水平一様磁場発生装置):コイル形状:1辺5m 正方形コイル、コイル間距離 5m、周波数特性:DC〜1.2Hz以上(-3dB)、1.2Hz〜100Hz(スポット周波数による位相補償)、最大磁束密度:600μT(実効値)(コイル間中央)
・大型ペアコイル(室内平磁場発生装置):コイル形状:1辺5m 正方形コイル、コイル間距離 13m、周波数特性:DC〜1.2Hz以上(-3dB)、1.2Hz〜100Hz(スポット周波数による位相補償)最大磁束密度:100μT(実効値)(コイル間中央)
・架空コイル(室内外広範磁場発生装置):コイル形状:縦16m×横16m 正方形コイル コイル地上高10m、周波数特性:DC〜3Hz以上(-3dB)、 3Hz〜400Hz(スポット周波数による位相補償)最大磁束密度:50μT(実効値)(コイル中央地上1m)
・実験棟:広さ:8.35mラ8.1m、階高:4.7m、ラーメン構造、柱600角、梁せい700、アラミド筋コンクリート造、木製扉・プラスチックサッシュ窓枠を使用


【今後の展開】

当社では、これらの電磁環境実験施設を活用して、21世紀に向けてより広い範囲にわたるであろう電磁気的環境問題に、今後とも積極的に取り組んでいくとともに、各方面からの施設利用の要望に対して、幅広く対応していきたいと考えています。


【本件に関する問い合わせ先】

 
東急建設株式会社
経営企画室広報担当 下原
E-mail:webmaster@tokyu-cnst.co.jp

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