2026.07.14
都市型データセンターとは?高架下活用で進む次世代インフラ実証
目次
生成AI、IoT、5Gなどの普及により、都市部では大量のデータをより速く、より安定して処理するためのインフラ整備が求められています。 AI活用やスマートシティ、映像解析、遠隔監視、リアルタイム通信などが広がるなか、データを遠隔地で処理するだけでなく、利用者やデータが発生する場所に近い都市部で処理する重要性が高まっています。
一方で、都市部ではまとまった土地の確保が難しく、データセンターを新たに整備する場所には限りがあります。
こうした社会的背景を踏まえ、東急株式会社、東急電鉄株式会社、イッツ・コミュニケーションズ株式会社、東急建設株式会社の4社は、鉄道高架下を活用した都市型データセンターの導入検討に向け、2026年6月から実証実験を開始しました。
本記事では、都市型データセンターが注目される理由、高架下を活用する意義、そして今回の実証実験における当社の取り組みについて紹介します。
都市型データセンターが高架下活用で注目される理由
都市型データセンターが注目されている背景には、都市部におけるデータ処理需要の増加と、用地確保の難しさがあります。
これまでデータセンターは、広大な敷地を確保しやすい郊外や地方に設置されるケースが多くありました。しかし、生成AIやIoT、5Gの普及により、都市部に近い場所でデータを処理し、低遅延かつ高信頼なサービスを提供するニーズが高まっています。
そのなかで、鉄道高架下のような既存の都市空間は、新たなインフラ整備の選択肢として注目されています。 新たに大規模な土地を取得するのではなく、都市の中に既に存在する空間を有効活用することで、デジタルインフラの分散配置につながる可能性があります。
生成AI・IoT・5Gの普及で都市部のデータ処理需要が高まっている
都市部では、オフィス、商業施設、物流施設、交通インフラ、スマートビル、防犯カメラ、センサー、モバイル通信など、日々多くのデータが生まれています。
特に生成AIの活用が進むことで、画像、音声、テキスト、業務データなどを高速に処理する必要性が高まっています。 また、IoT機器や5G通信の普及により、リアルタイム性が求められるサービスも増えています。
たとえば、映像解析、遠隔監視、スマートビル管理、交通制御、災害対応、物流管理などでは、データ処理の遅れがサービス品質や安全性に影響する可能性があります。
そのため、データを利用者や設備に近い場所で処理できる都市型データセンターの重要性が高まっています。
都市部の用地不足に対して高架下が新たな選択肢になる
都市部でデータセンターを整備する際の大きな課題が、用地の確保です。 データセンターには、サーバー設備、冷却設備、電源設備、通信設備、保守スペースなどが必要であり、設置場所には一定の条件が求められます。
しかし、都市部では土地価格が高く、まとまった敷地を確保することは容易ではありません。そこで注目されるのが、鉄道高架下などの既存空間です。
高架下は、都市部に連続的に存在する空間でありながら、活用方法に余地がある場所もあります。この空間をデータセンターの設置候補として検討することで、都市部におけるデジタルインフラ整備の可能性を広げることができます。
鉄道沿線には人、企業、施設、通信需要が集まりやすく、データ処理の拠点としても高いポテンシャルがあります。高架下を活用した都市型データセンターは、都市空間の有効活用と次世代インフラ整備を両立する取り組みといえます。
実証実験の概要
今回の実証実験では、東急大井町線の高架下に「モジュール型小規模データセンター」を設置します。
鉄道高架下という特殊な環境において、サーバーへの影響や、筐体の遮音・断熱・免振・冷却性能などを測定し、さまざまな場所でのデータセンター設置の実現可能性を検証します。
実証実験は、東急株式会社、東急電鉄株式会社、イッツ・コミュニケーションズ株式会社、東急建設株式会社の4社で実施します。
各社の知見やアセットを組み合わせることで、東急線沿線を軸とした次世代デジタルインフラの展開を目指します。
東急大井町線の高架下に小規模データセンターを設置
今回設置するのは、サーバーの稼働に必要な冷却装置や電源設備などを、コンテナのような専用の箱に集約したモジュール型小規模データセンターです。大規模な建物を新たに建設するのではなく、限られたスペースにも設置しやすい点が特徴です。
都市部では、広い敷地を前提としたデータセンター整備が難しいケースがあります。 そのため、モジュール型のようにコンパクトで柔軟性のある設備は、都市型データセンターの導入において有効な選択肢になります。
また、東急線沿線には大容量光ファイバーネットワークが敷設されています。 このネットワークを活用することで、都市部における低遅延・高信頼なデータ処理基盤の構築につなげることが期待されます。
振動・冷却・通信品質など実用化に向けた性能を検証
鉄道高架下にデータセンターを設置する場合、一般的な建物内とは異なる条件を考慮する必要があります。 たとえば、列車走行による振動や騒音、外気温の影響、限られたスペースでの冷却性能、通信品質の確保などです。
今回の実証実験では、鉄道高架下特有の環境がサーバーに与える影響を確認します。 あわせて、サーバー筐体の遮音性能、断熱性能、免振性能、冷却性能などを測定し、実用化に向けた技術的な検証を行います。
高架下という環境で安定した運用の可能性を確認できれば、今後は鉄道高架下だけでなく、狭小地や既存施設の一部など、都市部のさまざまな空間への展開も視野に入れることができます。
東急建設が担う役割と今後の展開
今回の実証実験において、当社はモジュール型データセンターの技術開発を担います。 都市部の限られた空間にデータセンターを設置するためには、サーバーを収める筐体の設計、冷却、遮音、断熱、免振といった建設・設備面の技術が求められます。
データセンターは、IT設備であると同時に、建築、設備、電力、通信が一体となった社会インフラです。 当社は、これまで培ってきた建設技術や都市インフラに関する知見を活かし、高架下をはじめとする都市空間に適した新たなデータセンターのあり方を検証していきます。
モジュール型データセンターの技術開発を推進
モジュール型データセンターでは、サーバーを安定稼働させるための筐体性能が重要になります。 特に高架下では、列車走行に伴う振動や騒音、外部環境の影響を受ける可能性があるため、通常の設置環境とは異なる技術的な検証が必要です。
当社は、こうした環境条件に対応するため、遮音、断熱、免振、冷却などの性能検証を通じて、モジュール型データセンターの実用化に向けた技術開発を進めます。
限られた都市空間に設置できるモジュール型データセンターは、今後のデジタルインフラ整備において重要な選択肢になると考えています。
都市空間の有効活用とデジタルインフラ整備を両立
都市部では、土地不足や建設コストの上昇により、新たなインフラを整備するための場所を確保することが難しくなっています。 一方で、高架下、駅周辺、商業施設、物流施設、オフィスビル周辺など、既存空間を有効活用できる可能性は残されています。
当社は、都市空間の有効活用とデジタルインフラ整備を両立することが、これからのまちづくりにおいて重要になると考えています。
今回の実証実験は、東急線沿線におけるデジタル都市基盤の構築に向けた取り組みの一つです。 東急グループは、沿線の魅力と付加価値を高めることを目指し、次世代デジタルインフラの展開を視野に入れています。
都市型データセンターは、単なるIT設備ではなく、都市開発、交通インフラ、通信インフラと連携しながらデータ活用を支える基盤として、その役割が広がりつつあります。
知っておきたい関連用語
ここでは、今回の実証実験を理解するうえで知っておきたい関連用語を紹介します。
都市型データセンターとは
都市型データセンターとは、都市部や都市近郊に設置されるデータセンターのことです。 利用者やデータが発生する場所に近いエリアに設置することで、低遅延で安定したデータ処理を実現しやすくなります。
生成AI、IoT、5G、スマートシティ、映像解析、遠隔監視などの分野では、データ処理のスピードや安定性が求められます。そのため、利用者に近い都市部に小規模なデータセンターを分散配置する取り組みが進められています。
モジュール型データセンターとは
モジュール型データセンターとは、サーバー、冷却装置、電源設備、通信設備などを専用ユニットにまとめたデータセンターです。 コンテナのようなモジュールに必要な設備を集約することで、大規模な建物を新築しなくても設置しやすい点が特徴です。
限られたスペースに設置しやすく、必要に応じて追加・移設しやすいため、都市部や狭小地、高架下などでの活用が期待されます。
低遅延とは
低遅延とは、データを送信してから処理結果が返ってくるまでの時間が短い状態を指します。
たとえば、映像解析、遠隔操作、オンライン会議、IoTセンサーの監視、AIによるリアルタイム処理などでは、通信や処理の遅れがサービス品質に影響します。
低遅延を実現するには、通信回線の性能だけでなく、データを処理する場所も大きく影響します。 利用者や機器に近い場所でデータを処理することで、より速く安定したサービス提供につながります。
まとめ
生成AI、IoT、5Gの普及により、都市部では低遅延・高信頼なデータ処理基盤の重要性が高まっています。 一方で、都市部ではデータセンター用地の確保が難しいという課題があります。
こうした課題に対し、鉄道高架下などの既存空間を活用した都市型データセンターは、新たな選択肢となる可能性があります。
今回、東急グループ4社は、東急大井町線の高架下にモジュール型小規模データセンターを設置し、鉄道高架下という特殊な環境での実用化に向けた検証をしています。当社は、モジュール型データセンターの技術開発を通じて、都市空間の有効活用と次世代デジタルインフラ整備の両立に取り組んでまいります。
今後も東急建設は、建設技術とデジタル技術を掛け合わせ、持続可能で付加価値の高い都市インフラの実現に貢献していきます。
