コンクリートがCO₂を出す?低炭素コンクリートの仕組みを解説!

「コンクリートはCO2を出している」と聞いて驚きませんか?身近な材料の知られざる課題と、それを解決する次世代コンクリート「ゼロクリート」を特集。セメントを極限まで減らし、逆にCO2を材料として取り込むことで「カーボンネガティブ」を実現する驚きの仕組みを、専門用語を噛み砕いてお届けします。
コンクリートがCO₂を出す?低炭素コンクリートの仕組みを解説!
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サムネ(ゼロクリート).png
環境問題に関心を持つと、「建物をつくる材料は本当に環境にやさしいのだろうか」と気になる方も多いのではないでしょうか。なかでもコンクリートは身近な一方で、「実はCO₂を出している」と聞くと驚かれるかもしれません。けれど、何が原因でどこに工夫の余地があるのかが分かれば、低炭素化の方向性も見えてきます。
本記事では、当社が開発した「ゼロクリート」を題材に、コンクリートのCO₂排出の背景と、材料の工夫によって排出量を実質ゼロ/マイナスへ近づける考え方を、専門用語をできるだけかみ砕いて解説します。読み終えた頃には、建設分野で進む脱炭素の取り組みを、より具体的にイメージできるはずです。

コンクリートがCO₂を出す理由と、低炭素コンクリートの基本

コンクリートそのものが「勝手にCO₂を発生させる」わけではありません。ポイントは、コンクリートをつくるための材料のうち、主原料の一つであるセメントの製造に多くのCO₂が関わっている点です。セメントは石灰石などを高温で焼いて化学反応させてつくるため、エネルギーを使うことに加え、化学反応の過程でもCO₂が発生します。その結果、コンクリート製造に関わるCO₂排出量の約9割がセメント製造に起因するとされ、ここが低炭素化の最大の焦点になります。 では、低炭素コンクリートとは何かというと、主に「セメントに頼る割合を下げる」「CO₂を固定して相殺する」といった工夫で、材料に由来するCO₂排出量を減らす考え方のコンクリートを指します。前者は、セメントの一部を別の材料で置き換えることで排出量の大きい部分を直接減らす方法です。後者は、回収したCO₂を材料の形で活用し、コンクリートの中に取り込むことで排出を相殺する方法で、近年注目されています。 当社が開発した「ゼロクリート」は、この両方の考え方を組み合わせ、材料に起因するCO₂排出量を実質ゼロ(カーボンニュートラル)だけでなく、条件によっては実質マイナス(カーボンネガティブ)まで目指す点が特長です。 差し込み画像①(ゼロクリート).png

東急建設の「ゼロクリート」とは?カーボンニュートラル/ネガティブの仕組み

当社が開発した「ゼロクリート」は、コンクリート材料に起因するCO₂排出量を実質ゼロ(カーボンニュートラル)、さらに条件によっては実質マイナス(カーボンネガティブ)まで目指せるコンクリートです。ここで重要なのは、「排出を減らす」だけでなく、「CO₂を材料として使い、固定して相殺する」という発想を組み込んでいる点です。 コンクリートのCO₂排出量の大半はセメント製造に由来するため、まずはセメントの使用量を抑えることが、低炭素化の近道になります。ゼロクリートでは、セメントの代わりにCO₂排出量の少ない材料を使うことで、材料由来の排出を大きく下げます。さらに、CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization:CO₂の回収・利用)の考え方にもとづき、CO₂を固定できる材料をコンクリートに加えることで、残った排出分を相殺します。 この「相殺」に関わる材料が、後の見出しでも詳しく触れる軽質炭酸カルシウムです。簡単に言うと、回収したCO₂を反応させて炭酸塩の形に変え、コンクリート材料として活用します。CO₂が"気体のまま大気へ戻る"のではなく、"材料の一部として形を変えて取り込まれる"イメージです。こうした工夫により、同一強度のコンクリートと比べて、CO₂排出量を実質100%以上削減できる可能性がある、という特長につながっています。 また、環境性能だけを追うと「強度や耐久性は大丈夫?」と心配になるかもしれません。ゼロクリートは要求性能に応じて材料の配合を調整できる設計としており、施工性や耐久性を損なわずに環境性能を高められるよう検討を重ねています。実際に、材齢28日で約50N/mm²の強度発現性を確認しており、設計基準強度36N/mm²程度まで対応可能な見通しを得ています。 差し込み画像②(ゼロクリート).png

セメント使用量を0〜20%に抑える材料設計(高炉スラグ微粉末・酸化カルシウム)

ゼロクリートの低炭素化の中核にあるのが、CO₂排出量の大きいセメントの使用量を、通常の0〜20%まで減らす材料設計です。コンクリートの材料は大きく分けると、骨材(砂や砂利)、水、そして結合材(固まるための粉体)で成り立っています。一般的なコンクリートでは、この結合材の中心がセメントですが、セメントは製造時のエネルギー使用や原料由来の化学反応によってCO₂が発生しやすいという課題があります。そこでゼロクリートでは、結合材の考え方を見直し、セメントの役割を別の材料で補うことで、材料由来のCO₂排出を大きく下げています。 具体的に活用しているのが高炉スラグ微粉末酸化カルシウムなどを主体とした混和材です。高炉スラグ微粉末は、鉄をつくる工程で生じる副産物を微粉末にしたもので、資源を有効に使える点でも注目されています。これを結合材として活用することで、セメントの使用量を減らしながら、必要な強度や耐久性を確保する方向を狙います。また、酸化カルシウムなどを組み合わせることで、硬化反応の進み方や材料の性質を調整し、用途や求める性能に合わせたコンクリートとして成立させる工夫をしています。 環境負荷を下げるためにセメントを減らすと、「固まりにくいのでは」「施工が難しくなるのでは」といった不安も出やすいところです。ゼロクリートでは、セメント、高炉スラグ微粉末、酸化カルシウム、さらに次の見出しで説明する軽質炭酸カルシウムを、当社の独自の調合割合にもとづいて調整できるようにしており、施工性や耐久性を損なわないことを前提に検討を重ねています。つまり、単に「セメントを減らしました」で終わらせず、現場で使える品質を保つための材料設計をセットで組み込んでいる点がポイントです。 さらに、高炉スラグ微粉末のように本来は別用途や廃棄対象になり得るものを活用することは、CO₂だけでなく廃棄物の削減にもつながります。環境性能を高める取り組みは、単一の指標だけでなく、資源循環の観点でも意味を持ちます。ゼロクリートは、こうした複数の環境課題を同時に改善できる可能性を視野に入れて設計しています。

CCU材料「軽質炭酸カルシウム」でCO₂を相殺する考え方

ゼロクリートのもう一つの柱が、CCU(Carbon dioxide Capture and Utilization:CO₂の回収・利用)の考え方を取り入れ、CO₂を「排出するもの」ではなく「材料として使うもの」として扱う点です。セメント使用量を減らしても、材料由来のCO₂排出を完全にゼロにするのは簡単ではありません。そこで当社は、CO₂を固定したCCU材料として軽質炭酸カルシウムをコンクリートに添加し、残る排出量を相殺する設計を組み込みました。 軽質炭酸カルシウムは、簡単に言うとCO₂を"炭酸塩"という安定した形に変えた粉体材料です。CO₂をそのまま大気に放出するのではなく、化学反応によって別の形に変えて材料化することで、コンクリートの中に取り込めるようになります。この「固定して使う」発想が、カーボンニュートラル、さらにはカーボンネガティブの考え方につながります。 製造方法も、資源循環の観点で特徴があります。軽質炭酸カルシウムは、コンクリート二次製品の工場内で発生する高アルカリ廃水と、CO₂を反応させて製造します。高アルカリ廃水は、条件によっては特殊な処理が必要になるものですが、そこにCO₂を反応させることで材料として活用できる形に変えられます。つまり、CO₂の回収・利用だけでなく、工場内で発生する副産物の有効活用にもつながり、環境負荷の低減を多面的に進められる可能性があります。