【東急建設版】積み上げ式CO2排出量算定の仕組みを大公開!

2022年度より新築建築工事について、建築資材のCO2排出量を「積み上げ式」により算定しています。こ当社が提案する積み上げ式CO2排出量算定の考え方や手順について解説します。

【東急建設版】積み上げ式CO2排出量算定の仕組みを大公開!

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「積み上げ式」とは?

 建築資材の製造までに係るCO2排出量を算定する場合、大きく「概算式」と「積み上げ式」の2通りの方法があります。それぞれに長所短所がありますが、積み上げ式で算定することで低炭素材料などCO2低減の取組みが反映できることから、積み上げ式によるCO2算定のニーズが高まっています。当社ではまずCO2を視える化し、受注した新築建築工事を「積み上げ式」でCO2算定する取組みを2022年度から始めています。

従来の積み上げ式の問題点

 一般的な積み上げ式の手順で建物のCO2の算定をしようとすると、まず「数量拾い」の壁が立ちはだかります。建物は通常の製品とは違って膨大な建築資材が使用されており、建物ごとに材料も異なるため、正確な数量を拾い出すことは非常に困難です。無理に拾い出そうとしても、人によって誤差が生じてしまいます。

 次に問題となるのが「排出原単位」です。積み上げ式で算定する場合、積み上げベースの排出原単位を使用すべきですが、一般的にはこれが有料です。無料で使用できる産業連関表ベースの排出原単位もあるのですが、大元が金額ベースで算定されているため、折角資材を積み上げて算定しようとしているものに割り当ててしまうと、概算に戻ってしまうため積み上げにした意味がなくなると考えます。

 また、積み上げベースの排出原単位を使用した場合でも、掲載されている「単位」が建築工事で通常扱う単位と異なる場合が多くあり、単位換算の手間が発生します。さらに、積み上げ式ベースの排出原単位を用いたとしても、建築資材に割り当てる排出原単位は圧倒的に不足しています。建物は特殊な部材が多く使用されるため、やむなく代替えで割り当てることが非常に多くなり、ここでも誤差が発生します。

 こうして一生懸命拾い出して排出原単位を割り付けて算定した値は、往々にして概算式で算定したCO2排出量より多くなってしまいます。当然のことですが、積み上げ式では細かく拾うほど足し合わされる数が多くなるのでCO2排出量がどんどん大きくなってしまいます。本来、方式が異なるCO2排出量を比較すること自体がナンセンスですが、数値として視える化されることで、弁解の余地なく比較されてしまうことが経験上よくあります。

「東急建設版」の工夫と特徴

 先のような問題を解決するため、東急建設では独自の工夫を取り入れた積み上げ式算定手法を考案しました。本手法は、一定の精度を保ちつつも極力ルールを単純化することで、作業の効率化と算定誤差を最小化できると考えます。

 まず数量拾いの問題に対しては、拾い出す項目を26種類に限定しました。少し強引かと思われますが、当社で重量構成を調べたところ、上位の20品目程度まで拾い出すことで全重量の97%以上を占めていることが分かっており、26品目あれば問題ない範囲と考えます。また、26品目の選定は、単純に重量の上位から選ぶわけではなく、見積内訳から数量が取り出しやすいことや積み上げベースの排出原単位が存在することも考慮して選定しています。建設工事では見積時に内訳を作成するため、見積内訳から取り出すことを考慮することで拾い作業が効率化・自動化できます。

 排出原単位に対しては、積み上げベースのIDEAv3(※1)を基本的には使用しています。先に述べたようにそのままだと見積内訳の単位に合わないため、上記の26項目については単位換算したものを当社の標準原単位データベースとして定めています。

 26項目以外の項目が発生する排出量は、26項目の合計値に補正係数を掛けて算定します。補正係数は、概算式とある程度の整合がとれるように定めました。産業連関表ベースの排出原単位には、建物自体の排出原単位も記載されており、この値と本手法で算定した全案件の平均値が等しくなるように補正係数を定めています。この補正係数、及び26項目の内容と排出原単位は社内ワーキングを立ち上げて定期的に見直しを行うことで精度を高めています。

当社の算定目的

 積み上げ式による建物のCO2排出量算定は、数量拾いや割り付ける排出原単位などによる誤差が大きいなどの課題があり、まだまだ全企業を統一する手法を確立するのは困難であると考えています。また、目的が異なれば統一する必要もないのかと考えます。

 当社の算定目的は、当社内における建物のCO2排出量算定・比較・分析であり、発注者様へのCO2排出量の可視化や低減提案が目的です。これらを実現するために、算定ルールを単純化・効率化した独自のCO2排出量算定手法を考案しました。

 現状は当社だけの取組みですが、今後は同手法で同じ目的の他企業にも拡大し、適用範囲を増やしていきたいと考えています。

当社が考える積み上げ式CO2排出量算定は、添付資料でより詳細に説明しています。

【資料ダウンロードする】ボタンからご覧ください。

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※1:LCI データベース IDEA Version 3.2国立研究開発法人 産業技術総合研究所 安全科学研究部門 IDEAラボ

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