気候変動リスクへの取り組み

気候変動リスクへの取り組み

気候変動への取り組み

東急建設は、マテリアリティに「気候変動(対応と適応)」を設定し、気候変動への取り組みを最重要課題の1つと認識しています。長期経営計画 ”To zero, from zero.”では、「脱炭素」、「廃棄物ゼロ」、「防災・減災」を3つの提供価値と定め、関連するイニシアティブへの積極的な参画や各種施策を通じて、カーボンゼロに挑戦しています。

温室効果ガス削減目標のSBT認定を取得

パリ協定で合意された気温上昇を2℃未満に抑える目標を達成するため、当社は、温室効果ガスの排出量削減に向けた国際的な枠組みであるSBT認定を取得しました。
中長期目標として、2℃を十分に下回る目標を設定し、目標達成に向けた取り組みを実行していきます。

SCIENCE BASED TARGETS

環境関連データ集:3-1. 温室効果ガス(GHG)排出量

取り組みの一つとして、ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)プランナーの認定を取得し、新築やリニューアルのZEBを推進しています。

CDP回答

2019年より環境情報開示に対する取り組みについて国際的な調査・評価機関であるCDPの気候変動に関する質問への回答を行っています。2019年度の回答では、A~Dの8段階のB-、以降2020年度はB-、2021年度はB、2022年度はA-、2023年度はA-の評価を受けました。評価で指摘された事項について、改善・向上を図り、温室効果ガス排出量の削減と環境情報開示リスクの低減を推進しております。

CDP回答

TCFD提言への賛同

当社は、2020年11月に気候関連財務情報開示タスクフォース(以下TCFD)の提言に賛同し、情報開示に向けた取り組みを進めています。今後、気候変動が事業に及ぼすリスク・機会の分析、分析結果に基づく戦略等について、TCFD提言に沿った情報開示を充実させていきます。

TCFD提言への賛同

RE100に加盟

事業活動における使用電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げ、世界的に影響力のある企業が参加するイニシアティブ「RE100」に2021年3月から加盟しています。当社では、2030年までに工事や事業所を含む事業活動で使用する全ての電力を再生可能エネルギー電力に転換することを目標に掲げています。

RE100に加盟

気候変動リスク低減に向けた3つの提供価値の追求

環境目標と環境関連活動状況

当社では、重点項目として地球温暖化防止、資源有効活用の目標を定め、これらの状況を継続的に把握しています。

環境関連データ集:3-1. 温室効果ガス(GHG)排出量
環境関連データ集:3-2. エネルギー消費量
環境関連データ集:3-3. 燃料使用量
環境関連データ集:3-4. 主要資材
環境関連データ集:3-5. 廃棄物排出量

2023年度 単体目標・実績

対象 項目 区分 単位 2021年度 2022年度 2023年度
実績 実績 目標値 実績 評価※1
気候変動防止 1 二酸化炭素排出量 国内土木 トンネル t-CO2 10,258 5,594 11,042 以下 7,061
その他 t-CO2 9,794 15,381 10,694 以下 6,988
国内建築 t-CO2 17,897 13,728 15,407 以下 14,652
海外施工※2 t-CO2 3,691 1,185 以下 8,344 ×
2 使用エネルギー量※3 国内内勤全体 kWh/m2 54.94 54.52 62.41 61.62
資源有効利用 3 廃プラスチック排出量※4 土木 t 817.5 819.1 1,137.0 以下 1,000.1
建築 t 3,560.4 3,916.0 4,453.0 以下 3,543.4
4 混合廃棄物排出量※4 土木 t 561.3 358.8 598.0 以下 372.1
建築 t 1,318.1 673.9 3,311.0 以下 1,398.2

1 ◎:目標を十分上回る(目標値を10%以上上回る) 〇:目標達成  ×:目標未達成

2 2022年度より、海外施工を目標管理の対象に追加しました。

3 2023年度より、対象とする事務所の範囲を変更しました。

4 対象:国内新設・新築工事

「指標と目標」はこちらをご確認ください。

2023年度 建築自社設計による使用時排出削減貢献量(効果)

単位(t-CO2:耐用年数60年共通)

件数 設計排出量 基準排出量 排出削減量 削減率 備考
設計分 16 402,158 685,682 283,525 41.3% 竣工後の運用時のみ対象
竣工分 15 692,438 1,114,541 422,103 37.9% 竣工後の運用時のみ対象

事業活動における環境負荷低減に向けた取り組み

Scope1,2の取り組み

再生可能エネルギー電力の使用

当社はRE100に加盟し、2030年度までに事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーへ転換することを掲げ、脱炭素社会の早期実現に向けて取り組んでいます。この一環として、太陽光発電会社と共同で2023年度に47カ所に合計4,311kWの発電能力を持つ当社専用のNon-FIT太陽光発電所を設置し、2023年度は年間で発電した4,322MWh分について、バーチャルPPAにより環境価値取得、温室効果ガス1,890t-CO2を削減しました。これは建設現場特有の課題にバーチャルPPAサービスを導入することで解決した先駆的な取り組みとして評価され「令和5年度新エネ大賞」の新エネルギー財団会長賞「導入活動部門」を共同で受賞しました。従前から実施しているRE100対応の再エネ電力受電と合わせて、2023年度は、国内工事で25,532MWhを再エネ化し、導入率は83.9%になりました。
また、当社が発電事業者としてお客様の敷地内に太陽光発電設備を設置・運営し、当該発電設備での必要電力を直接お客様に供給するオンサイトPPAサービスを開始するにあたり、156kWの発電能力を有する設備の設置が完了し、2024年5月から供給を実施しました。

東急建設とクリーンエナジーコネクトが「令和5年度 新エネ大賞」を共同受賞

環境関連データ集:3-1. 温室効果ガス(GHG)排出量

環境関連データ集:3-2. エネルギー消費量

低炭素燃料の導入

建設現場からの温室効果ガス排出量の約75%を占めるScope1のうち、その大半を占める軽油使用による排出量低減の施策として、天然ガス由来の液体燃料で軽油と同等の性質を持つGTL燃料(Gas to Liquids)の導入を進めています。
また、2022年4月からは廃食油や動植物油等を原料として製造され、ライフサイクルアセスメントベースで約90%のCO2排出量削減となるリニューアブルディーゼルの導入を開始しました。廃食油を原料として製造されカーボンニュートラルでCO2排出量が約100%削減可能なB100燃料の2023年度導入に向けた取り組みを開始しています。2023年度は358.6kℓが軽油からGTLに、22.8kℓがRDに、14.2kℓがB100に、0.2kℓがB5に置き換わり、178.01tのCO2排出量を削減しました。

GTL燃料の導入

Scope3の取り組み

ZEB、ZEH-Mへの取り組み

当社事業においては、引渡し後の建物から排出されるCO2(Scope3)が非常に大きくなるため、工事を発注するお客様に対し、環境負荷の少ない資機材の提供やZEB・ZEH-Mの提案を積極的に行っています。ZEB・ZEH-Mに関しては、自社設計物件において2016年度から対応しています。2023年度は、4件のZEB設計物件(『ZEB』:1、ZEB Ready:2、ZEB Oriented:1)が竣工し、新たにZEB:8件を設計しました。技術研究所のZEB改修では、竣工から6年連続で76~ 79%エネルギー消費量の削減を実現しています。またZEB竣工物件においては毎月の詳細項目(空調、換気、照明、給湯、昇降機、太陽光発電)の計測値を収集、設計値と実測値の比較検証を実施しており、エネルギー運用のサポートと得られたデータの蓄積および検証によるZEB提案・設計へのフィードバックをしています。加えてお客様のニーズに柔軟に対応するため、「ZEHデベロッパー」への登録を行い、ビルだけでなく住宅建築においても脱炭素化の取り組みを加速させています。

環境関連データ集:3-1. 温室効果ガス(GHG)排出量

環境関連データ集:3-2. エネルギー消費量

ZEB、ZEH-M提案ツールについて

お客様がZEB、ZEH-Mへ取り組む「きっかけ」となるようなシミュレーションツールを開発・運用しています。2020年11月に開催した技術展2020では、オフィスビルを対象としたデモ版を公表し、その後も機能拡充(用途・省エネ技術選択機能の追加)を行い、2023年3月に一般公開しました。引き続き、ZEB、ZEH-Mリーディング企業を目指して、デジタル技術の活用による、具体的なZEB・ZEH-M設計提案ツールの開発を行ってまいります。

木造・木質建築ブランド「モクタス」を支える技術開発

建築物や家具等に炭素を吸収する木材を利用することは、木材中の炭素が長期間貯蔵可能となることから、脱炭素社会実現への貢献が期待されています。当社の技術研究所では、当社が展開する木造・木質建築ブランド「モクタス」を支える技術を複数開発しています。
その一つとして、準耐火性能を有する木被覆木製柱を開発し、国土交通大臣の認定(60分準耐火構造)を取得しました。この木製柱は、柱4面の見える独立柱に用いることができ、木の温かみを感じられる「木現し」を可能としました。また、ナイス株式会社、淡路技建株式会社と共同で開発した高遮音二重床システム「SQサイレンス50」は、「ウッドデザイン賞2020」の「ソーシャルデザイン部門(建築・空間・建材・部材分野)」を受賞する等高い評価を受けています。さらに、中大規模木造・木質建築として、CLT部材を使ったROOFLAG賃貸住宅未来展示場等の施工実績により、お客様から高い評価を得ています。

モクタス

工事現場における具体的な取り組み

工事現場からの温室効果ガス排出量は、重機・運搬車両の使用によるものが多く、環境負荷低減に向けてはこれらの削減が必須となります。特に土木工事関連で排出が多いため、残土等の搬出に対策を講じることは大きな削減効果につながるとともに、運搬回数を減らすことで安全面での効果にもつながっています。当社では、建設現場の社員一人ひとりが環境負荷低減に貢献するため、CO2削減に継続的に取り組んでいます。

工事現場における具体的な取り組み

環境負荷低減型材料の開発

建設の主要資材であるコンクリート分野では、「低炭素型コンクリート CELBIC 」、「環境負荷低減型先送り材サスタル 」、「電気炉酸化スラグ細骨材コンクリート」の3技術を駆使して、「脱炭素」・「廃棄物ゼロ」へ挑戦しています。

グリーンインフラ実証施設

近年、都市部での集中豪雨が頻発する中で、東急建設では、2018年に自然環境が持つ機能を活用したグリーンインフラ※の実証実験施設を研究所の敷地内に設置しました。同施設は雨水を「貯める」、「使う」、「自然に還す」、生き物が「棲む」、「育つ」をキーワードに、①都市型集中豪雨対策(雨水流出抑制、浸透促進)②環境保全の技術(雨水の有効利用、水循環の促進、動植物の生息・生育環境の創出)を検証することを目的としています。

グリーンインフラ:自然環境が有する機能(防災・減災、生物多様性の保全など)を活用し、持続可能な地域づくりを推進する考え方です。

グリーンインフラ実証施設概要図

雨水の浸透促進イメージ図

  • 環境計測を行った結果、集中豪雨時の雨水の貯留及び流出防止効果を確認しました。また、「水辺の生息空間(ビオトープ)」の機能を併せ持ち、ヒートアイランド現象を抑制するほか、放流したヘイケボタルの累代飼育に成功するなど昆虫類や鳥類の生息を可能にする生物多様性保全効果も確認しました。
    本実証施設で得られたデータをもとに、都市部における防災・減災の提案や環境保全活動等を進めていきたいと考えています。また、生物多様性の教育活動の場として活用することで地域コミュニティも巻き込んだ取り組みを実施したいと考えています。

  • 施設の様子

    施設の様子

  • シジュウカラ
  • オナガ
  • ヘイケボタル

施設の生物の観察状況
(シジュウカラ、オナガ、ヘイケボタル)