生物多様性への取り組み
当社では、環境方針の重点実施項目に「生物多様性保全」を掲げており、2024年2月には「生物多様性指針」を制定しました。この方針、指針に基づき、様々な取り組みを行っています。 当社は、生物多様性について、その保全や回復に向けた活動、関係する地域社会との協調、環境技術の開発などの取り組みをこれからも継続してまいります。
生物多様性指針
東急建設は、事業活動において生物多様性の保全・回復と生物資源の持続可能な利用が不可欠であるとの認識のもと、世界目標であるネイチャーポジティブの考え方に賛同するとともに、『持続可能な社会』の実現に向けてネイチャーポジティブに貢献するため、以下に定める項目に基づき、バリューチェーン全体で自然資本における生物多様性に配慮した事業活動を推進する。
1.事業活動の影響評価
設計・調達・施工等の事業活動における生物多様性への影響の回避・軽減・代償及び回復について検討し、適切に評価する。
2.保護地域、絶滅危惧種への対応
法的に保護された地域や、生物多様性価値の高い地域、絶滅危惧種等が確認される地域における開発において、適切な配慮を実施する。
3.教育
生物多様性に関する基礎的知識を社内及び協力会社へ教育することで生物多様性保全・回復への認識を深める。
4.研究開発
生物多様性の保全・回復に関する情報や技術的知見を集積し、関連する研究・技術開発を推進し事業機会を創出する。
5.コミュニケーション
サプライヤーをはじめとした様々なステークホルダーとの対話を行い、生物多様性保全・回復の実効性を高める。
6.社会貢献
地域社会、国内外の関係組織等と連携や支援をすることで、より効果的な生物多様性保全・回復を推進し地域社会へ貢献する。
7.情報の開示
自然資本と企業活動に関する情報を公正に開示する。
制定日:2024年2月1日
当社事業バリューチェーンの中で生物多様性へ与える影響の把握と対応
生物多様性と当社事業の関わり
当社は建設を主たる事業とする総合建設事業者として、生物多様性へ事業が与える影響について把握し、その対応について取組を行っております。
建設工事
施工時発生する濁水等は、河川や海域における生物の生息・生育に影響を及ぼす恐れがあります。また、作業所等で利用する照明は、昆虫・植物等への影響が指摘されています。
そのため、周辺環境へ影響を及ぼすおそれがある場合には、沈砂池などを設け濁水を直接河川等へ放流しない取組を実施する他、照明においても昆虫類が視認しくい防虫ライトを採用しています。
加えて、山間部におけるトンネル・道路建設や都市部の再開発に伴う土地利用の変化は、従来の自然生態系等に変化を与え、生息・生育環境への影響をもたらすおそれがあります。
そこで、施工現場においては、周辺環境において希少種が確認された場合、希少種のモニタリングや環境保全措置をとおし、生息環境への配慮を実施しています。また、開発事業において、積極的な在来種の導入など生物多様性に配慮した計画を提案しています。
建設物の利用
建設工事そのものが、生物多様性に影響を与えるものであるため、関連する研究・開発は影響の低減を提供できるものになる可能性があります。
そこで、生物多様性に貢献する予測システムや都市に水辺を創出するグリーンインフラ実証設備など、生物多様性に配慮した研究・開発を実施しています。
生息地の復元・保護
当社事業管理地における里山環境の整備及び希少種の保全
横浜市栄区上郷町における、約0.32km2の当社事業管理地において、自然環境の保全活動を実施しています。
当該地域は横浜市指定鳥獣保護区「円海山」及び「円海山・北鎌倉近郊緑地保全区域」に基づく「円海山・北鎌倉」近傍に位置する地域です。この地域は、神奈川県の伝統的な里山地域である谷戸として、かつて稲作が営まれていた場所でした。しかし、耕作放棄地を中心とする手つかずの環境になっていました。
そこで、樹林の整備や、人工湿地、湿地性のオギ原の創出等を実施し、里山環境の保全を実施しています。また、地元市民団体と連携し里山環境の整備を実施しています。
また当該地域で確認された、希少種や指標種の保全を実施しています。
希少種であるタコノアシなどについて、行政や専門家と連携し、生息地の保全や、種子の播種等を実施しています。希少種は、環境省レッドリスト(2020)における絶滅危惧Ⅱ類(VU)1種、準絶滅危惧(NT)2種について保全を実施しています。また地域の指標種であるヘイケボタルの生息地として、遊休地を人工湿地として整備し、自然環境下による生育を確認しています。
取り組み一覧
- エコロジカル・コリドー簡易評価ツール「CSET」
都市部における生物多様性のポテンシャルを簡易評価するためのツールで、生物多様性に配慮した都市計画の立案に役立つものです。 - 生物多様性簡易評価システム「BSET」
自然環境の有する多様な機能(生物の生息の場の提供、良好な景観形成など)を活用し、持続可能な地域づくりなどに役立つものです。 - 生態系の評価手法の導入
持続可能な開発を目指し、動植物の生息環境の変化を定量的に評価する「HEP(ハビタット評価手続き)」を導入しました。
生態系の「現状」と複数の「計画案」を定量的に評価することで、生物多様性の保全に配慮した土地利用の在り方を求める取り組みです。 - 緑化にともなう害虫表示システム
生物多様性簡易評価システム「BSET」の開発で培ったノウハウをもとに、㈱石勝エクステリアと共同開発した「害虫を寄りつかせない環境づくり」を緑地の設計段階においてサポートする技術です。 - グリーンインフラ実証施設
自然環境の有する多様な機能(生物の生息の場の提供、良好な景観形成など)を活用し、持続可能な地域づくりなどに役立つものです。