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Project Story 01
ー【土木】とうきょうスカイツリー駅高架化プロジェクトー

土木プロジェクトの概要

東京・墨田区にある「とうきょうスカイツリー駅」付近の鉄道約900mを高架化する事業において、東急建設を中心とするJVが、3つの工区のうちの1工区を担当することになった(以下、とうきょうスカイツリー駅高架化プロジェクト)。この事業は駅付近の踏切を除却し、道路と鉄道それぞれの安全性を高めるとともに、交通流動のボトルネックを解消、また、鉄道により南北に分断されていた街を一体化して活性化する狙いがある。営業運転を止めずに行う鉄道工事ならではの難しさに加え、工事に使えるスペースが狭い。東急建設の鉄道土木チームは、困難な条件がそろうこのプロジェクトに果敢に挑戦している。

それぞれの持ち場で
社員一人ひとりが何を大切にし、
何を現場で発揮しているのか?
若手から作業所長まで、
6名のそれぞれの視点で語ります。

困難な条件でも安全は守り抜く。
技術と入念な準備で挑む鉄道土木。

作業所長の視点

作業所長

T.T

入社

Episode

自信を確信に変えるため
3Dモデルの採用に踏み切った。

「この狭さの中で作業するとなると、何か工夫が必要だな」
、とうきょうスカイツリー駅高架化プロジェクトで作業所長を拝命したT.Tは、真っ先にそう思った。
「とうきょうスカイツリー駅」には南側に商業施設、北側には狭い道路を挟んで都営住宅が立ち並ぶ。鉄道は営業運転を続けたまま、駅付近を高架化しなければならない。T.Tは鉄道土木工事のキャリア20年超を誇るベテランで、これまでも困難な条件の中で数々の工事を担当、作業所長の経験もある。だが、このプロジェクトはそのT.Tの目で見ても、一筋縄ではいきそうにないと感じられた。その困難な状況の中で、T.Tがブレイクスルーのアイデアとして採用したのが、3Dモデルの活用である。
「現場一帯を3D化して、CAD上でシミュレーションすることにより、より安全で効率的な方法で工事を進めたいと考えました。」

T.T自身は3Dモデルを活用して工事を進めたことはない。そこで東急建設本社のICT推進グループや、施工支店の応援を得て、現場一帯の3D化に取り組んだ。図面のある部分は図面から3D化、上空の施設や図面のない部分は3Dレーザースキャナーにて周辺データを3次元計測することにより3D化した。東急建設として、総力を挙げて現場を支援したのである。
「3D化してシミュレーションすることで、重機の大きさや配置を決定できました。経験則だけでなく裏付けも得られ、いわば自信を確信に変えることができました。3Dモデルの活用により施主にも伝わりやすく、安全性・施工性も大きく向上しました。」

Episode

1年間の頑張った苦労が
一瞬で
吹き飛ぶ鳥肌ものの感動。

鉄道土木工事には特有の難しさがあり、一般的な土木工事の経験だけでは容易に参入できる分野ではない。長年にわたり鉄道工事で磨いてきた技術とノウハウが評価され、高い信頼につながり、受注へと結びついている。
「どんな工事でも安全が最優先されるのは当たり前ですが、鉄道工事は鉄道運行の安全も支えているという意味でも責任があります。そして何より、工事できる時間も限られています。多くの工事が、終電から始発までの約3時間しかできません。3時間をいかに有効に使って工事を進めるか。入念な計画と準備が必要になるのです。」

そんな鉄道土木工事において、とりわけ重い意味を持つのが、切り替え工事である。とうきょうスカイツリー駅高架化プロジェクトでいえば、電車の通る線路を高架に移す工事がこれにあたる。この時ばかりは鉄道会社も電車の運行を止めるのだが、多くの利用客に告知して進めるだけに失敗は許されない。
「切り替え工事は年に1度あるかないかという大イベント。それだけに、工事が終わって初めて電車を通す時の鳥肌ものの感動は、他に代え難いものがあります。今まで頑張った苦労が、その瞬間に全て吹っ飛ぶ。これがあるから鉄道土木工事はやめられない。」とT.Tは言う。

Episode

若手育成に所長として
使命感を持つ。
「信頼はするが、検証は怠らない」

T.Tは作業所長としての役割を次のように語る。
「安全が全てに優先、品質もよいものを作らなければならない。近隣住民や環境に配慮しながら工程を管理し、会社に利益をもたらす。そしてもう一つ、人材育成も作業所長の役割としてあります。東急建設が培ってきた鉄道工事の技術やノウハウを若手に伝授していく。その使命感を持って今、ここに立っているのです。」
そんなT.Tの作業所長としての心得は「信頼はするが、検証は怠らない」ことだという。
「若手を育てるにあたって、信頼して仕事を任せるということが大切です。でも、丸投げしてあとは知らないよ、ということではありません。自分でも細かな検証を行い、若手の取り組みをしっかりフォローする。若手は失敗して当たり前。このプロジェクトで言えば、K.K主任は第一線で活躍してくれていますが、その下は入社4年目以下の若手です。彼らに期待はしていますが、全て上手くできるわけがない。それは自分の経験からよくわかっているわけです。」
はっきりモノを言うT.Tは、交渉ごとでは頼りになる存在の一方で、部下には人情味溢れる人柄で知られている。スカイツリーを毎日仰ぎ見る現場で工事をしながら、スカイツリーに昇ったことがない社員が大半であることを気にかけている。
「自分も昇ったことがまだありません。工事が終わったら、みんなで記念に昇るのもいいかもしれないね。」
T.Tはこう言って、この日一番の笑顔を見せた。

技術とノウハウを結集した
高架化工事の集大成。

主任の視点

工事主任

K.K

入社

Episode

難工事の多い鉄道土木に
あえて挑戦しようと考えた。

とうきょうスカイツリー駅高架化プロジェクトでは、駅を高架化するにあたって、一般的な仮線方式ではなく、活線直上(かっせんちょくじょう)方式を採用している。仮線方式は現在使用している線をいったん仮線に移して作業するもので、通常はこの方法をとる。ところが、スカイツリー駅周辺は工事作業のためのスペースを確保することが難しいため、仮線方式が使えない。そこで活線直上方式という難易度の高い方法をとることになった。活線直上方式では、①仮橋脚を組立、②工事桁を架設し、③既設高架橋を解体、その後④新しく高架橋を構築といった手順をとる。

「電車が走る位置は変わらないので、工事作業のためのスペース確保が難しいこのプロジェクトには適した方法です。ただ、非常に難しい工事なので、鉄道土木に技術とノウハウを持つ当社であっても、総力を結集する必要があります。」
当作業所では所長、副所長に次ぐ工事主任のポジションに就くK.Kはこう説明する。K.Kは入社以来、一貫して鉄道土木の現場を経験してきた。
「入社当時は“社長を目指すぞ”という意気込みでした。それで、東急建設の中でも難しい工事を多く手掛けている鉄道土木分野に、あえて挑戦しようと考え希望を出したのです。」
東急線沿線で3現場を経験し、から工事主任として、とうきょうスカイツリー駅高架化プロジェクトに加わった。

Episode

制約が生む技術。
知恵を結集した工事

スカイツリー駅付近は地盤が軟弱であり、杭を打つ際にも工夫が求められる。
「高架橋の杭基礎部分は、固い地盤に到達させるために、大口径の円形の穴を深く掘削しています。このボーリング工事には、適した方法としてTBH工法を採用しました。ポンプで泥水を吸い上げ、安定液を加えたうえで掘削した土だけをふるいにかけて取り出し、再び水を坑内に戻すという工法です。安定液を加えることで、掘削した周囲の地盤が崩れないようにしています。また、安定液の品質管理やスライム処理の管理方法を確立し、TBH杭の品質向上に努めました。」

さらに、既設高架橋の直下に新たな高架橋を建設するという工法を採用したため、限られた空間でも施工しやすいように、高流動コンクリートを採用。これにより、打設したコンクリートが隅々まで行き渡るよう工夫を行った。
「駅の形状としてカーブがきついことも、施工上の難易度を高める要因の一つでした。他にも多々難しいところがあったので、工事経験の豊富な方を検討会に招いて、その人にしかわからないような技術をたくさん教えていただきました。まさに東急建設の総力を挙げた取り組みをしていると思います。」

Episode

「君に100億円預けるよ」と
言われる作業所長を目指したい。

品質を確保するための努力だけではない。鉄道の土木工事現場は、時間との闘いでもある。電車が運行していない深夜帯の約3時間で、いかに工事を進めるかが勝負となる。
「施工に必要な手順、時間工程を分単位で検証し、時間を短縮するために、協力会社の方とも連携して知恵を絞る日々です。」
ベテラン社員に教えを請う一方で、主任として後輩の育成もミッションの一つである。
「以前は、自分のやり方をそのまま後輩に押しつけてしまうこともありました。しかし、一人ひとり性格が異なるため、全員にとって最適な方法ではないと気づきました。今では、それぞれの性格や成長段階を見極めながら指導することを心がけています。また、実際の現物を見せながら説明したり、専門用語をできるだけわかりやすく伝えたり、余裕のある人から順にできる範囲で任せたりと、さまざまな工夫をしています。こうした試行錯誤を重ねることこそ、実は私自身が最も成長した部分かもしれません。」
東急建設が取り組むとうきょうスカイツリー駅高架化プロジェクトは、墨田区と鉄道会社が主体となる事業の一環だが、国や都の支援も受けており、注目度も高い。
「活線直上高架化工事の集大成となるビッグプロジェクトに携われることを、とても光栄に感じています。今となっては必ずしも社長という肩書きにこだわりはありませんが、『君に100億円を預けるよ』と信頼されるような作業所長を目指したい。そのためにも、一つひとつの作業所での経験を大切に積み重ねていきたいと思っています。」

与えられた3時間で何をするか。
分刻みの計画立案に知恵を絞る。

若手社員の視点(3〜4年目)

T.O

入社

一つひとつの仕事に、
意志と気持ちを込めて。

若手社員の視点(3〜4年目)

A.O

入社

Episode

半年がかりで準備してきた
線路の切り替え工事。

「作業できるのは、深夜1時から早朝4時まで。この3時間に何をするのか、日々、分刻みの綿密な計画を立案しています。」
こう語るのは、東京スカイツリー駅高架化プロジェクトに配属されて約3年が経つT.O。入社後8カ月の研修を経て鉄道土木工事を希望し、最初に任されたのがこの作業所だった。
所長や主任が立案した長期の施工計画に基づき、自身の担当工種を日々の作業計画に落とし込むのがT.Oの役割である。

「入社前は、施工管理の仕事は図面や計画作成など机上での業務の割合が多いと考えていました。しかし、実際に現場に出てみると、仕事の中心は作業所にあり、現場での対応が重要だと実感しました。協力会社の作業員の方々や発注者の意見をとことん聞き、納得いただける形で工事を進めなければなりません。肌感覚で言えば、ヒアリングが7割、机上での計画作成が3割といったところです。」
日々の計画立案のほかに、半年がかりで作成してきた線路切り替え工事の計画立案も大詰めを迎えている。
「一晩で線路の線形を大きく変える大がかりな工事です。これはさすがに3時間ではできないので、19時から4時までの9時間をいただきました。夜は電車の運行を止めるので、乗客の皆さんにも影響する工事。責任重大です。」
T.Oはやや緊張した面持ちでこう語った。

Episode

現場で活かす技術。
施工品質の向上に向けた試み。

T.Oの一つ後輩にあたるA.Oは、からとうきょうスカイツリー駅高架化プロジェクトに加わった。宮城県出身のA.Oは、小学生のときに東日本大震災を経験し、その出来事を通じて命の大切さを強く実感した。その際、がれきの処理や街の復興に土木工事が欠かせないことを知り、この世界に飛び込んだ経緯がある。とうきょうスカイツリー駅高架化プロジェクトでは、仮受杭から仮橋脚の設置までを担当。「私が手がけたのは本設ではなく、いずれ撤去される仮設の橋脚でした。しかし、一時的とはいえ、乗客を乗せた電車が走る重要な役割を担うため、気持ちを込めて仕事に取り組みました。」とA.Oは語る。

東急建設では、若手を対象にキャリアアップの一環として、現場での工夫を発表する機会を設けている。支店長、部門長などの役職者に向けて各自が発表。T.Oは、自分たちが施工した高架橋で透気試験機を用いたコンクリートの非破壊検査を実施し、その内容を発表した。
大学で透気試験機について研究していた経験があったため、「この現場でも活用できるのでは」と考え、技術部に相談し、試験機を現場に持ち込んで測定を行った。試験を通じて、施工品質を確認する新たなアプローチに取り組むことができ、技術活用の可能性を感じる機会となった。

Episode

1人ではなくチームで作る仕事。
得意なことで貢献しよう。

とうきょうスカイツリー駅高架化プロジェクトで約3年を過ごしているT.Oに、成長した実感はあるかと聞くと、こんな答えが返ってきた。
「最初の頃は、決められた道筋を歩くだけで精一杯だったのですが、最近は自分の意思で道筋を決められるようになってきました。もちろん、自分で判断して決めたことが間違っていて、上司に修正を求められることはあります。それでも、自分なりの考えで発信できるようになったのは、大きな成長といえるかもしれません。」
一方、A.Oはまだ成長の実感はないと次のように話す。
「数学に例えると、公式は覚えたので、問題が解けるようになりました。でも、自分で公式を導き出すところまではいっていません。」
どうやら、まだまだ修行が必要らしい。また、図面から立体を想像することに時間がかかることも悩みの種だとA.Oは言う。しかし、T.Oは「気にする必要はない」と断言、次のように続けた。
「1人ではなくチームで作るのが私たちの仕事。苦手なことは得意な人に任せて、自分が得意なことで貢献すればいい。」
T.Oの助言に頷いたA.Oは、仕事の魅力と今後の夢について語った。
「自分が作った図面通りに工事が進み、モノが出来上がっていくのは単純に嬉しい。また、いろんな人と話せるので、現場でのコミュニケーションも楽しんでいます。将来は海外の案件に関わり、現地で作業所長になるのが夢。さらに、自分が携わったプロジェクトの魅力や、土木工事での仕事のやりがいを発信することにも関心があります。」

若手として、リーダーとして、
デジタル活用の先頭に立つ。

若手社員の視点(1〜2年目)

S.T

入社

作業が進むに連れて、鉄道土木の
醍醐味を感じるようになった。

若手社員の視点(1〜2年目)

T.M

入社

Episode

気を引き締めて参加する
週間工程の打ち合わせ。

毎週木曜の夕刻、とうきょうスカイツリー駅高架化プロジェクトに関わる東急建設の社員が集まり、週間工程の打ち合わせが開かれる。2024年に入社したT.Mも、この打ち合わせに必ず参加している。
「一言も聞き漏らしてはならない大切な打ち合わせ」とT.Mは言う。
この打ち合わせでは、翌週の工程について、それぞれの担当者から説明があり、そこで必要な資機材、仮設材、排出される産業廃棄物の種類や量などが判明する。T.Mはここで示された資機材等の手配を行うとともに、産業廃棄物を運び出すためのトラックの手配などを担当しているのだ。

T.Mの1年先輩にあたるS.Tもまた、この打ち合わせ緊張した面持ちで参加している。S.Tが気を配っているのは、どんな資機材が何日の何時に運ばれてきて、どこに置かれるかということだ。S.Tはこのプロジェクトに加わる前、世田谷区の鉄道工事の作業所で土木工事を担当していたのだが、大きな違いがあるという。
「前の現場でも鉄道の高架化に取り組んでいましたが、資材置き場やクレーンなどの作業スペースは全く違っていました。このプロジェクトは特にスペースが狭い。そのため、段取りが予定とずれると、資材が置けない、クレーンを動かすスペースがないといった事態に陥ってしまう。だから、段取りを決めるこの打ち合わせがとても大切。」とS.Tは話す。

Episode

デジタル野帳の導入を
中心になって進めた。

そんなS.Tにある日、作業所長から声がかかった。
「君は前の現場で、施工管理のICTツールを使っていたと言っていたね。」
「デジタル野帳のことですか。確かに使っていました。便利ですよ。」
「それ、うちの現場でも使ってみたいので、君が中心になって導入してくれないか。」
デジタル野帳は施工管理の支援アプリのことで、iPad等にダウンロードすることで使える。そもそも紙の手帳タイプの野帳は、建設業界で働く人にとって必携のツールとして知られている。デジタル野帳はそのデシタル版といえるもので、便利な機能がいろいろある。さしあたってS.Tが注目した機能は、紙の図面をデジタル化して表示できることだった。

「作業員さんに施工内容を説明する際に、図面を見せる必要があるのですが、紙の図面だとかさばるし、うっかりすると風に飛ばされることもあります。1枚だけ図面が抜けたりしていると、作業所に取りに戻る、なんてこともあって、とても面倒。デジタル化された図面をiPadで持ち出せば、こうした問題が解決され、画面上から書き込みもできるのです。」
こうS.Tは説明する。S.Tが音頭を取って、とうきょうスカイツリー駅高架化プロジェクトでは、全員がデジタル野帳を使えるように体制が整えられた。

Episode

鉄道特有の設備、機器、工具…。
モノの名前を覚えることから始まる。

T.MとS.Tの二人は、1学年違うが同じ大学の出身である。ただし、学生時代に面識はなく、T.Mが就職活動中にS.Tの働く現場を見学した時に、初めて互いを認識したのだという。そして、偶然にも本プロジェクトで一緒になった。
T.Mは入社後、関西支店で道路のトンネル工事作業所を経験し、2番目の現場として昨年10月からとうきょうスカイツリー駅高架化プロジェクトに加わった。
「鉄道現場を経験するのは初めてで、わからないことだらけ」と言うT.Mに対し、S.Tが指導している。
「自分も初めての鉄道現場では、いろいろ戸惑いました。鉄道工事は鉄道の運行に影響を与えないことが大前提となるので、細かなルールがたくさんあります。また、鉄道特有の設備や機器、工具などがあって、それを覚えないと仕事になりません。今は一つひとつのモノの名前を教えている段階です。」とS.Tは話す。
T.Mは「S.Tさんが丁寧に細かく教えてくださるので、大変助かっています。」と感謝の言葉を口にする。また、最初の頃には味わえなかった仕事の面白味を感じるようになったとT.Mは次のように話す。
「最初は最終形態が予測できないまま作業をしていたのですが、工事が進むにつれ、あの作業はこんな意味があったのか、と感じることが増えてきました。これは土木工事の醍醐味ですね。」
一方、S.TはT.Mの真面目な姿勢を高く評価していた。
「素直なので吸収が早い。これからどんどん成長していってくれると思いますよ。」