[なぜ、いま木造建築なのか]
冬の時代を経て、いま、
新たな木造建築時代へ。
日本全国各地に存在する神社仏閣や古民家などの木造建築は、世界にも類を見ない文化遺産であり、まさに日本の木の文化の象徴ともいえます。わが国では明治時代以降も新しい建築資材を受容しながら、庁舎、学校、工場など多くの大規模建築物が木造で建設されました。今でこそRC造やS造にそのポジションを奪われていますが、かつては木造が都市建設の主役だったのです。
しかし、1950年前後を境として、木造建築はひっそりと影を潜めることになります。太平洋戦争の戦火により多くの都市が焼失。国防の礎として、そして自然災害への対策として、建築物の非木造化を求める機運が高まったのです。その結果、RC造などが主役の座に躍り出て、木造建築はしばらく冬の時代を迎えることとなります。
そして、約半世紀を経たいま、我が国の森林サイクルが深刻な事態を迎えることになりました。樹齢50年を超えた森林蓄積が著増し、伐期を迎えたにもかかわらず、国産材利用の低迷により健全なサイクルが駆動しない状況となっているのです。政府による昨今の規制改革は、そうした事態の打開策として進展したものです。
2度の建築基準法改正、公共建築物等木材利用促進法(2021年改正)の施行を受け、さまざまな木質系構造部材が登場。都市に新しいタイプの木造建築物が建設されるようになりました。森林・林業の活性化に端を発する潮流ですが、環境負荷への配慮をはじめとした木材のさまざまな魅力が受け入れられ、ここ数年多くの需要を生み出しています。
日本における木造建築の歴史
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衆議院「都市建築物の不燃化の促進に関する決議」
官公庁建築物の不燃化(※同国会で建築基準法制定) -
閣議決定「木材需給対策」
都市建築物等の耐火構造化、木材消費の抑制、未開発森林の開発
(※同時期に森林法制定) -
閣議決定「木材資源利用合理化方策」
国・地方公共団体が率先して建築物不燃化を促進、木材消費の抑制、
森林資源開発の推進 -
日本建築学会「建築防災に関する決議」
防火、耐風水害のため木造禁止 -
建築基準法改正(性能規定化)
法令の目標性能を確保すれば木造耐火建築物が実現可能に -
公共建築物等木材利用促進法
低層の公共建築物は原則として木造 -
建築基準法改正(木造関係基準の見直し)
3階建ての学校等に係る防耐火規制の緩和 -
改正公共建築物等木材利用促進法
法の対象が公共建築物から建築物一般に拡大