TECHNOLOGY

[木造・木質建築を支える技術]

ゼネコンとしての総合力と
20,000棟を超える住宅開発の実績を
さらなる高みへ導く技術開発。
東急建設の技術研究所は、
木造・木質建築の未来を創ります。

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POINT 01

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中高層木造建築構法
P&UA構法

当社は、株式会社市浦ハウジング&プランニングを代表とする「P&UA(Panel & Unbonded Anchor)構法共同技術開発グループ」に参加し参加各社と共に本構法の開発を進めてきました。本構法を用いて作成した10階建て共同住宅のモデルプランは一般財団法人日本建築センターの評定を2022年10月14日に取得しています。
本構法は一方向ラーメン構造と耐力壁を木造で架構するもので、新たに開発した「GIUA(Glued in Unbonded Anchor)」と「シアリングコッター耐力壁」を用いることで高耐力・高剛性・高靭性を実現します。
GIUAは中大規模木造で一般的な鋼棒挿入接着接合であるGIR(Glued-in Rod)に、鋼棒をあえて接着させないアンボンド部分を設けた接合構法です。このアンボンド部分により従来のGIRで生じていた脆性的な木材割裂を抑え、大変形時まで木材を損傷させずに鋼棒が伸び縮みすることでエネルギーを吸収する機構となっています。工場で柱・梁の木材端部にGIUAを施工しておき、現場ではこの柱・梁を鉄骨のパネルゾーン(柱梁のジョイント部分)にボルトを用いて緊結するだけであり施工の省力化が図れます。
シアリングコッター耐力壁はLVLやCLT等の木質パネルを上下に並べ、パネル間に設けた切り込みにL型に折り曲げ加工した鋼材(コッター)を組み合せ差し込んで接続した耐力壁で建物フレームとは鉄骨プレートとボルトにより接続します。地震時には上下の木質パネル間で2枚の耐力壁パネルがスライドしようとするため、パネル間に差し込んだ鋼製コッターが変形することにより地震による力(地震エネルギー)を吸収します。大変形時まで木質パネルを損傷させず、コッター部分が変形してエネルギー吸収する機構となっているため一般の木質耐力壁に比較して優れた変形性能とエネルギー吸収性能を有しています。

個別評定を取得した10階建て協働住宅のイメージパース

POINT 02

木質耐火部材
モクタスWOOD(耐火)

東急建設は、中・大規模木造市場への取り組みの拡充に向けて、2021年10月14日、木質耐火部材のパイオニア企業「株式会社シェルター」とOEM契約を締結しました。この契約により、新たに耐火部材「モクタスWOOD」がラインアップされました。
「モクタスWOOD」は日本で初めて3時間耐火の認定を取得した木質耐火部材です。燃え止まり層に石こうボードを使用しながらも、柱や梁の表層は木質であり、木の温もりを活かした建物に仕上げることができます。また、デザインやコストに合わせて様々な木材で製造可能であることも特徴です。例えば、耐火性にデザイン性を兼ね備えた「丸柱」も製造できます。エンタシス(緩やかなふくらみのある胴張り)やフルーティング(表面の縦溝)加工を施すことも可能で、多角形や曲面など、設計者のあらゆるニーズにお応えいたします。
法律上最長の耐火時間である3時間耐火仕様が実現したことで、木造建築物に対する耐火性能上の階数制限はなくなり、これまではRC造やS造で建てられてきた15階建て以上の超高層ビルも木造で建設可能となります。「モクタスWOOD」は主に都市部で増加傾向にある耐火の木造・木質建築物需要に応えるために、2022年より本格的に導入しています。

【モクタスWOODラインナップ】
1時間耐火構造(柱・梁・外壁)
2時間耐火構造(柱・梁・間仕切壁・外壁・床)
3時間耐火構造(柱・梁)

POINT 03

モクタスWOOD(準耐火)
柱・はり

建築物に必要な防火性能や耐火性能は、法律によって厳密に定められています。主要構造部の防耐火にかかる工法は、木材を石膏ボードなどで被覆するメンブレン型や、大断面集成材を用いるものなどが一般的ですが、いずれも美観やコスト、納期の面で問題があります。東急建設のモクタスは、それらの問題を解決するための研究に取り組み、準耐火性能を有する木被覆木製柱を開発。この度国土交通大臣の認定(60分準耐火構造)を取得しました。この木製柱は、柱4面の見える独立柱に用いることができます。また、木質被覆材を長手方向に複数枚張ることも可能で、1層分の階高だけでなく吹き抜けに立つ長い柱にも対応できます。公共施設や商業施設、老健施設、学校、共同住宅などの用途が想定され、新築のみならずコンバージョンなどにも利用可能です。

コストダウンと
調達工期の短縮を実現

木質荷重支持部材、木質被覆材ともに一般流通材と特注材のいずれも使用可能で樹種も問いません。製材、集成材のいずれも使用可能で県産材の利用ニーズや幅広い意匠ニーズなどに対応できます。施工に関する適応力も高く木質荷重支持部材の建方が完了している状態で現場にて木質被覆材を張る方法や、工場で木質被覆材を張った柱を現場で施工する方法など、種々の条件に合わせた施工が可能です。木質荷重支持部材に木質被覆材を張る際は、木質被覆材の裏面に接着剤を塗布して木質荷重支持部材に張り付け、木質被覆材の端部を留付材で固定します。木材を組み合わせることによって、木の質感や温もりを低コストで実現するモクタスの60分準耐火構造柱。一般流通材を使用することで大断面集成材を使用する場合と比較してコストダウンと調達工期の短縮を図ることができます。
(特許出願中)

吹き抜けに立つ長い柱にも対応可能

一般流通材、特注材のいずれも使用可能

樹種を問わず、製材、集成材のいずれも使用可能

種々の条件に合わせた施工が可能

POINT 04

RC造に迫る
高遮音二重床システム

木質系建築におけるこれまでの床の遮音対策には、床の重厚化や防振装置の活用などがあります。これらの対策は、材料費や施工手間の増加によってコストが上昇するのみならず、建物自重の増加によって耐震性に影響を及ぼす可能性があり、必ずしも有効な対策とは言い切れません。モクタスの高遮音二重床システム「SQサイレンス50」は、独自開発の乾式二重床と、下階の独立天井を組合わせることにより高い遮音性能を実現し、ウッドデザイン賞2020も受賞しています。本システムは、防振支持脚と二重床床板の振動特性に着目し、両者を最適な組み合わせに調節することで床衝撃時の振動(騒音)を効果的に低減できる条件を明らかにして開発されました。特殊な材料を用いずに正方形状のパーティクルボードと防振支持脚を組合せることで、重量を50kg/㎡以下に抑えた『軽量化』と、対策の難しい重量床衝撃音に対して「LH‐50」、軽量床衝撃音に対して「LL‐35」という『高遮音化』を両立させています。
※ナイス株式会社・淡路技建株式会社との共同研究
(特許出願中)

床衝撃音遮断性能LH-50・LL-35
乾式工法で重機、特殊な工具が不要
50kg/㎡以下の軽量化を実現
床鳴りの防止と良好な歩行感の確保

モクタスの高遮音床技術「SQサイレンス50」 システム概要(断面図)

モクタスの高遮音床技術「SQサイレンス50」 遮音性能

*1 JIS A 1418-2に定める「衝撃力特性(1)をもつ標準重量衝撃源(タイヤ)」による重量床衝撃音遮断性能
*2 木造、軽量鉄骨造またはこれに類する構造の集合住宅に適用する
*3 JIS A 1418-1に定める標準軽量衝撃源による軽量床衝撃音遮断性能

POINT 05

高い安全性を備えた
広々とした大空間

エントランス、食堂、講堂、体育館…。広く大きな空間は、多くの木造・木質建築に求められる要素のひとつです。ポイントとなるのは、スパンと呼ばれる柱と柱の間の距離。その距離が長ければ長いほど、広い空間を実現することができます。しかし、一般的に流通している木材の長さは最大で6メートル。そのため、6メートルごとに柱が必要となります。さらに、6メートル以上の木材は多くのケースにおいて特注品となるため、納期とコストがかかってしまいます。そこで、東急建設のモクタスは構法研究と技術開発により、6メートルの規格流通材で、短納期かつ低コストで中大空間を創出する独自の構法を開発しました。本構法の基本性能を評価するため、実大の試験体を作成し錘を積載した鉛直載荷実験などを通じて、日々性能向上に取り組んでいます。
※ナイス株式会社との共同研究

規格流通材を用いた中空間構造工法の開発における鉛直載荷試験の様子

POINT 06

美観を永く保つ
耐候技術

あらゆる天候に晒される建築物は、常に劣化と戦っています。木造建築も例外ではありません。木造ならではの木の現しによる美しい外観を永く保つため、東急建設のモクタスではさまざまな耐候塗料を使用した研究を行っています。耐候塗料を塗った木材を技術研究所の屋上で1年以上外気に暴露し、定期的に色差計で変化を計測しています。また、撥水性、防水性を評価するための実験も重ねています。
※ナイス株式会社との共同研究

θ/2法による防水性実験の様子