東急建設

WOOD TREND!

木造11階建てモデルが構造評定を取得
P&UA構法が示す、高層木造実現への技術的到達点

P&UA構法共同技術開発グループの代表企業である株式会社市浦ハウジング&プランニングに伺った。

30年以上の歳月をかけて構想してきた構法

当社が参画するP&UA構法共同技術開発グループは、木造建築の課題を解決するためにP&UA構法を新たに開発し、本構法を用いた10階建て共同住宅モデルプランが日本建築センターの評定を取得しました。本構法は、一方向ラーメン構造と耐力壁を木造で架構するもので、新たに開発した「GIUA」と「シアリングコッター耐力壁」を用いることで高耐力・高剛性・高靭性を実現します。

P&UA構法の歴史は1986年に遡ります。当時、新都市ハウジングプロジェクトが進行中であり、民間活動を促進する技術開発コンペが開催されました。私たちは木造3階建てのラーメン工法を提案したところ、企画開発奨励賞を受賞しました。これを機に国の支援のもとで技術開発を行い、1989年にP&UA構法の前身となるGIR工法(RH構法)を確立しました。その後も協同組合や商社と協力して開発を続け、結果として1994年に建築基準法38条の一般認定を取得できました。この認定は、独自の工法を大臣が認定するもので、設計事務所の取得は初めてだと思います。RH構法では、木造3階建て等の共同住宅を約2千戸建設しましたが、やがて行き詰まりを感じるようになりました。木材は非常に脆い性質を持っていますが、それを克服する方法がなかなか見つからなくて。そんな心配をよそに、RH構法の特許権を消滅させると、皆さんがGIR工法を使い始め、様々な建築物に活用されるようになりました。こうした状況を目の当たりにして、3〜4年前から何とか改善できないかと真剣に考え始めました。当時はまだ、ぼんやりとしたイメージしかなく、具体的な形にするためには構造試験が必要でした。そこで、会社の了承を得て試験を行い、現在のGIUAの原型ができたんです。そこからは、試験結果をもとに少しずつ話が進んでいきました。

GIUAの実大実験の様子。
シアリングコッター耐力壁の実大実験の様子。
一般財団法人日本建築センターの個別評定を取得した10階建て共同住宅のイメージパース

思いがけない成功に大興奮 道が拓けた瞬間でした

GIUAは、逆転の発想が特徴です。これまでの技術では、木材が割れることでエネルギーを吸収していましたが、GIUAでは鋼棒がエネルギーを吸収することで木材を保護します。2回目の試験で実物大の試験体を作成し、大成功を収めました。今までは、木材が壊れてパキンという音がしていたのですが、それがまったく聞こえず、試験体がユラユラと揺れ続けて、最後には、木材の中にある鋼棒が伸び切って壊れたんです。その瞬間、皆、大興奮です。凄い!と。一般的には、新しいことにチャレンジすると大抵失敗します。今回も1回目は失敗しましたが、2回目は課題が見つかっただけで失敗がなかったんです。これには本当に驚きました。課題が見つかれば前に進むことができます。この試験の成功により、近畿大学の松本先生や藤田K林産技術士事務所の藤田さんから試験を継続しようと提案されました。しかし、資金力が限られていたために、2019年のはじめ頃から東急建設さんなど6社にお声がけをはじめました。皆さんからは、私たちがびっくりするほどの高評価をいただきました。正直なところ、大手企業が賛同してくださるとは思ってなかったのです。

個別評定を取得した架構のイメージ図。

ルート3の構造計算と共進化が最大の特徴

私たちの目標は、大地震が起きた際に建物の安全性を確保することです。これを実現するためにルート3の構造計算が必要でした。これは非常にハードルの高い試みです。現在、8階〜10階建ての純木造建築が建設されていますが、それらは免震とルート2を利用して設計されています。私たちはこのルート2に限界を感じていました。法律上は8階建て程度まで可能であると認識していましたが、それでも木造で大きな建物を建てることに不安を感じていたんです。

もう一点、今回の取り組みの大きな特徴は、大学の先生方と6社の建設会社、そして集成材の工場が共同研究を行ったことです。競争も大切ですが、私たちは同じ目標に向かって協力することが効率的だと考えました。普及や広報活動も6社で行うことができます。P&UA構法は、今後、6社によって実際に使用され、開発も継続していく予定です。一般的にはこうした取り組みを連携や共同と表現しますが、最近私は「共進化」と表現しています。共に進むことは、簡単なようでなかなかできないこと。五十田先生もおっしゃっていましたが、すごくユニークな取り組みだと思っています。

写真左/同社東京支店 建築室長 特任・木造技術開発担当 江口司津さん。
写真右/株式会社市浦ハウジング&プランニング 専務取締役 執行役員 大阪支店長 田中純一さん。