モクタスが切り拓いた新時代
東急建設の新たな地平

私が木造推進部を所管するようになった4年前、建築に木を使うことが企業の社会的責任に直結する時代が必ず来ると確信していました。当社はそうした潮流をいち早く捉えて「モクタスブランド」を立ち上げ、中大規模木造・木質建築への取り組みを本格的にスタートさせていました。そこで建築事業本部内に木造推進部を新設し、ゼネコンとして木造建築に本気で向き合う体制を整えたのです。
当時は「木造はコストが合わない」という固定観念が根強く、提案をしても採用には至らないケースが多々ありました。しかし、脱炭素や環境配慮への社会的関心が高まっていくなか、この4年間で市場は大きく変化しています。デベロッパーや発注者の意識は確実に進化し、木を使った提案への期待が着実に広がっています。最初は木に対する知識を持たなかったお客様とも、共に調べ、共に考え、伴走しながら実績を積み上げてきました。時代の変化を敏感に読み取り、自らを柔軟に変化させ続ける。この姿勢こそが、私たち東急建設の成長の源泉だと実感しています。今後も、木造・木質建築の可能性をさらに切り拓いていきます。

木造・木質化の提案力を育てる
次世代への架け橋

市場における木造・木質建築への期待は日を追うごとに高まっています。しかし、発注者の多くは具体的な知識や経験を十分に持っているわけではありません。その不安を乗り越え、未来を切り拓くのは、私たちの提案力にほかなりません。
物流施設などの分野では、私たちは地元雇用まで見据えたトータルな提案を行い、コンサルティング領域にまで踏み込める専門性を確立しました。一方、中大規模木造建築においては、こうした高い専門性を備えた設計者はまだ限られているのが現実です。このままでは社会の期待に応えきれない。その危機感が私たちの推進力となっています。
単なる木材利用ではなく、木の特性を理解し、適材適所で活用する。コスト、耐久性、施工性、安全性を見極めて提案し、発注者に「木でやりたい」と思わせる。そのために社内人材の育成と、外部パートナーとの連携。その両輪で設計力を底上げしていきます。
最近では「木造をやりたくて東急建設を志望した」という学生たちの声も届くようになりました。彼らの想いに応え、未来を担うフィールドを築く。それが、いま私たちに課せられた責任だと感じています。

魅せるのではなく、感じさせる
木心地のよい都市を創る

ゼネコン各社が自社ビルによる木造・木質モデル建築を打ち出していく中で、私たちはコマーシャルベースで成立する実用的な木造・木質建築に挑んできました。例えば、渋谷・宇田川町に竣工した「TQ渋谷宇田川町」は平面混構造の耐火建築物ですが、空間として木造範囲を設定し、木造の柱・梁材の仕上げも木現わしとしています。外観で木を魅せるだけでなく、ビルの利用者に木を感じさせる、空間に温かみと香りを宿す設計を実施しました。都市の中心にあっても、木は確かに人の心に温もりをもたらす。そう実感できた手応えある仕事でした。
こうした小さな成果の積み重ねがやがてよりスケールの大きなプロジェクトに実を結ぶと信じています。現在進行中の渋谷駅周辺の大規模開発でもビル利用者が肌で木を感じられる空間づくりを提案したいと考えています。都市にこそ木の持つ繊細な価値を届ける。渋谷という大きな舞台でその可能性をしっかりと証明したいと強く願っています。東急建設としての環境意識や技術力を象徴的に表現するモクタスのモデル建築が実現できれば、私たちの取り組みは次のフェーズに進めると確信しています。

モクタスからフォレストへ
都市と森林をつなぐ挑戦

私たち東急建設は、都市圏の再開発、交通拠点整備、インフラ整備など、都市型プロジェクトにおいて確かな実績を築き上げてきました。都市に求められるスピード、耐久性、デザイン性を兼ね備えた建築。これが私たちのコア事業であり、誇りでもあります。しかし今、脱炭素、循環型社会、ウェルビーイングといった新たな社会課題に、都市型ゼネコンである私たちも真剣に応えなければならない時代が訪れています。だからこそ「都市で木を生かす」ことに、私たちは本気で取り組み始めました。都市型ゼネコンの知見と、木造・木質化への挑戦が交差することで、東急建設らしい新しい都市づくりを切り拓いていきたいと思います。
こうした流れの中で、モクタスキューブやフォレストアクションといった新たな取り組みも、コア事業と密接に連動しながら進化しています。都市で木を感じ、現場で木を使い、森林を育てて未来へつなぐ。そんな総合的なアクションこそ、東急建設にふさわしい次の挑戦です。私たちだからこそ、できることがある。その信念を胸にこれからも社会に、そして未来に、確かな価値を届け続けます。