廃材に見えた古材が蘇る
想いを重ねる建築の現場から

とある小さな村で半焼した古民家がありました。その古材を用いて創業精神に触れる研修施設として再生する工事に参画しました。早々に、意匠設計と構造設計による古材の3Dスキャンを用いた架構の検討が行われました。それを形にするのは、地元の大工と木造経験の豊富な施工担当です。極力、元の位置に古材を戻すことにこだわり、ねじれに苦戦しながらも継手の加工や矩勾配の小屋組の建前、田舎家の煙抜きの最上部までを組み上げました。廃材のように見えていた古材たちは次々に板として開かれ、床の間や座板、上り框などに生まれ変わり、再び日の目を見ることとなりました。この様子を見て、造り手としてお客様の想いを形にできるだけでなく、使い手も素材のやさしさや時の経過を味わうことができる、木造建築は温かみだけではなく、手間をかけるからこそ得られる豊かさがあると気づきました。