やがて建築に木を使うことが企業価値向上に資することになる。

環境面の取り組みを強化していない企業は、取り引きすらできないという未来がすぐそこまで来ていると感じます。ヨーロッパの動きを見ていますと、サプライチェーンの中に入れないということもありえます。例えば、これから工事が始まる「(仮称)銀座五丁目プロジェクト新築工事」の施主である特定目的会社の本体は、英国の資産管理会社です。当社のホームページをご覧になり、環境施策に賛同していただけたようで、ZEBを利用した環境に寄与する建物の設計に出資をしていただきます。これからの建物は、国内資本だけで建つわけではありません。海外から資本が入ってくる中で、脱炭素やSDGsなどの取り組みが選ばれるための条件になってきたことを肌で感じました。日本企業にとって「環境面の取り組みを評価して選ぶ」という優先順位はまだまだ低く、「コストありき」が現実なのかもしれません。しかし、外資のように環境面の取り組みを要求してくる資本が現れつつあります。今後はそうした潮流に従って日本企業も方向転換してくるでしょう。建築に木を使うこと。やがて、それ自体が企業価値向上に資することになると考えています。

モクタスのモデル建築を渋谷で実現したい。

木造・木質建築の提案がゼネコン各社から出されていますが、そのほとんどは自社ビルです。現時点では、木を集中的に使用すればするほど予算がかかり、コマーシャルベースに乗らないのです。当社では、木とコンクリートと鉄をミックスすることによってコマーシャルベースに乗る木造・木質モデルを建築したいと考えています。モクタスブランドの象徴となるモデル建築です。

モクタスは、「木心地のよい都市を創る。」というビジョンを掲げています。その名の通り、都市に木の心地よさを足していくことがモクタスの目標です。木が内装材で隠れてしまったら、その空間を使う人に木の心地よさが伝わりません。目に見えるところに木があり、木の香りがする、木の心地よさが感じられる建物こそがモクタスです。先日、当社が施工して竣工したばかりの木造・木質化オフィスを視察しましたが、木の香りの中で働いているということが実感できる仕上がりでした。モクタスが目指しているそうした世界観を体験していただくためにもモデル建築は必要です。私個人としては、やはり渋谷で実現したいですね。当社は東急グループのゼネコンですから。

木造推進部は、市場黎明期のテンポラリー組織。

木造推進部は有期のテンポラリー組織だと考えています。木造・木質建築は業界の中ではニューメニューとして位置づけられ、情報が日に日に変わっていきます。森林サイクルの状況も同様に変わっていきます。第一に鮮度の高い最新情報を入手すること、第二に必要な技術を明確にして、その要求を技術研究所や営業統括に提供すること。それが木造推進部の担う重要な役割ですね。その先は推進部ではなくなっていくでしょう。全国各地の営業に木造・木質建築に関する知識を持つ人間を配置して、営業もしくは技術開発していくことになると考えています。木造・木質建築は、やがてコンクリートや鉄と同じ感覚で取り組まれていくことになるでしょう。幸いにして、当社には木造建築事業部があったことにより、木造・木質建築の分野では他社よりも少しだけ進んでいました。ゼネコンの多くは木造メーカーとの協業により事業を推進しています。知見自体はゼネコンにはなく、木造メーカーにあるものを借りているイメージですね。そうした知見を持っていることは当社の強みです。それを活かして、木造推進部には、事業スピードを加速してほしいと思います。