東急池上線戸越銀座駅
商店街とつながる木の駅
地域の玄関口を更新する駅づくり
東急電鉄が取り組んだ木を主役とした鉄道施設のリニューアル。
木造・木質建築が、地域の象徴となる駅を生み出した
地元商店街との共創による木造の駅づくり
近年、鉄道駅のリニューアルに際し、木造化や内装の木質化を行う取り組みが相次いでいる。2016年12月に改修工事が竣工した東急池上線戸越銀座駅は、地方先行で木造・木質化が進んでいた当時、23区で初めて森林・林業再生基盤づくり交付金事業の採択を受けた木造駅だ。
1927年の開業から約90年の歳月を経ていた同駅は、老朽化が課題となっていた。地元からは、改修に対して「木造駅舎の趣を残してほしい」という声が挙がっており、東急電鉄はそうした要望を踏まえ、ホーム屋根の建替えや木造駅舎の改修に着手。「木になるリニューアル」と銘打って、地元商店街と密に連携しながらプロジェクトに取り組んだ。沿線の魅力向上に向けて新たな方向性を模索していた東急電鉄にとって、同駅の改修は、地元連携の先駆的プロジェクトとしての性格を持っていた。
鉄道施設特有の施工条件を背景に 試行錯誤の中から生まれた建築美
同駅は、住宅密集地に位置し、大型重機による作業が困難な状況にあった。ホーム屋根は、人力で運搬可能な大きさの木材を組み合わせた木造シザーストラスアーチと鉄骨フレームによるハイブリッドな構法を採用。木を“現し”とすることで、駅利用者が木の肌合いや温もりを身近に感じられるホーム空間が実現された。
改修に使用された多摩産材(スギ・ヒノキ)は、丸太にして約470本分、約120立方メートル。鉄骨造に比べて建設段階の二酸化炭素放出量が約100トン削減されたという。
「施工方法については、東急建設と入念な検討を行っていましたが、この規模の木造改修は経験がなかったことから、日々さまざまな問題が発生しました。ひとつひとつ潰していくのが大変でしたが、事業者と施工者で互いに協力して乗り越えました」と横山さんは当時を振り返る。
“木になる”さまざまな波及効果
「全国屈指の商店街を擁する同駅だからこそ、その認知度を活用して東急池上線をアピールしていきたいと考えていました。ただ、具体的な施策は工事を進めながら詰めていきました」と杉山さん。木という明快なテーマが設定されたことで、改修工事は駅を起点としたまちづくりプロジェクトへと発展。さまざまな施策が展開された。使用した多摩産材の原産地、あきる野市への環境学習ツアーや植林体験、ホームの木製ベンチ制作ワークショップ、東京大学との連携による戸越銀座の魅力や価値を再発見するワークショップも実施している。改修工事の竣工後には、池上線沿線の活性化を目的とした「生活名所」プロジェクトがスタートした。結果として同駅の木になるリニューアルは、沿線全体によい影響を及ぼしてきたようだ。
「東急線は、東横線や田園都市線がメインと思われがちですが、池上線や東急多摩川線など、比較的ローカルな路線も盛り上げていく必要があります。池上線では同駅に続く第二弾として旗の台駅も木造による改修を行いました。竣工当初は木のいい香りがして、木目が光に浮かび上がる夜の光景がとてもきれいでした。お客様からも評価をいただいています」。
今後、“木になるリニューアル”が全国各地に波及すれば理想的だ。
※ソーシャルディスタンスを確保してインタビューしています。
