東急建設

PROJECT @FUKUSHIMA

福島県立白河実業高等学校実習棟

建てること自体が、学びになる
木造建築を教材にした高校実習棟の試み

福島発、次代の建築教育モデル

白河実業の再編にあたり、最初に掲げた方針は、建築・電気・機械・電子の4つの学科に在籍する生徒と先生が交流できる場をつくることでした。その中核がラーニングコモンズです。単なる共有スペースではなく、視線や動線が交差する開かれた空間を目指し、吹き抜け階段や見下ろせる中廊下など、設計に工夫を凝らしました。とはいえ、設計段階から何度も「どのように使うのか」「他の教室を広くしてはどうか」という声が上がり、度々計画から外れそうになりました。それでも諦めずに提案を続け、ようやく実施設計に盛り込むことができた、いわば復活を繰り返した不死鳥のような空間です。(藤島さん)

建築科棟については当初鉄骨造で計画していましたが、県の木造化方針や鉄骨部材の高騰・納期の不安、さらには工期の制約もあり、木造への方針転換を図りました。大断面集成材を使用した木造校舎は県立高校初のケースになります。ガラスカーテンウォールを採用した階段室など、私たちの提案が随所に反映されたのは、県と設計側で丁寧にキャッチボールができたからです。校舎全体が「学びの教材」になるという構想が、着実にカタチになったことを実感しています。(鈴木さん)

ガラスカーテンウォールを採用した木造棟階段室(1階)。

学びを深める、見える建築

本校舎の3階教室から建設中の木造の実習棟がよく見えます。軸組模型を教えていた当時、ちょうど授業で取り上げた木の構造が、目の前で組み上がっていく様子を生徒たちと一緒に見ることができました。動画や図面だけではイメージしづらいことが実際に見て理解が深まる。そういう意味で実習棟の工事はまさに生きた教材として活用できたと感じています。(長谷川さん)

木造棟2階実習室。
吹き抜けのある木造棟2階廊下。
木造棟トイレ前廊下(1階)。

建築=木造という意識は、私自身にも生徒にも根強くあります。構造だけでなく、木材がふんだんに使われた空間は親しみやすく、建築を学んでいる実感も湧くと思います。木材は県産材を使っていますので私たちにも生徒にも強い愛着のある建物になったと思います。「まるで自分の家に帰ってきたみたい」と話す生徒もいましたが、それだけ温かみのある空間なのです。(富樫さん)

実は実習だけでなく必修授業も実習棟でやりたいという声を生徒たちからよく聞きます。保護者の方々の関心も高く、たとえば卒業式に参列していた保護者が実習中の生徒を偶然目にして「こんな素晴らしい空間で学べるなんて」と感嘆していました。建築を学ぶ場としてふさわしい空間が実現できたと実感しています。(千葉さん)

鉄筋コンクリート造棟1階ラーニングコモンズ。

現場から伝わる建設業のリアル

見学会の開催は、県南建設事務所から学校側に声をかけて実現しました。建築科の生徒に建築への興味を深めてもらい、将来、建設業の担い手になってもらうことが目的です。生徒たちがリアルな現場を肌で感じてくれたこと。それが一番の成果でした。整理整頓され、安全に配慮された現場で建設業の魅力や職人のかっこよさが少しでも伝わったなら嬉しいです。

木造棟1階廊下。

東急建設さんについては「仕事に対する意識の高さが違う」と感じました。段取りの良さ、納まりの美しさ、現場トラブルに対するリカバリーを含めて技術の高さを感じました。(松浦さん)

中・大規模の木造建築は、CLTか大断面ラーメン構造のいずれかが主流ですが、本プロジェクトでは後者を採用しました。県立高校として木造2階建て校舎では初の試みです。CLTは県外加工による輸送コストが課題となるため、県産材の活用とコストの両立を目指し、現実的な選択を行いました。施工上の困難も多くありましたが、東急建設さんは各工程において的確な段取りと高い精度で応えてくれました。この木造大断面をカタチにしていただいた経験は、私たちにとっても大きな財産になりました。(鈴木さん)

右上 / 白河実業高等学校 実習講師 長谷川秀平さん。中央上 / 同校 教諭 富樫実さん。左上 / 同校 教諭 千葉祐揮さん。
右下 / 株式会社鈴木伸幸建築事務所 代表取締役 鈴木聖志さん。 中央下 / 同事務所 主任 藤島英寿さん。左下 / 福島県県南建設事務所 建築住宅部建築住宅課 主任建築技師 松浦ヒサ子さん。
校舎そのものが学びの教材となるように内装仕上材を記した壁。
木造棟外

福島県立白河実業高等学校 実習棟

所在地
福島県白河市瀬戸原 地内
構造・規模
鉄筋コンクリート造・木造地上2階建て
延床面積
7,200.34㎡(木造棟1,777.52㎡)
工事種別
新築
竣工年月
2023年7月(木造棟)