#02

#02 H¹O梅田茶屋町

introduction

近年、SDGsに対する社会的関心度の高まりにより、国内で木造のオフィスビルが増えはじめています。脱炭素社会に向け、建築時の二酸化炭素の排出量を抑えられる木材への注目や、木造建築でも中高層建築を実現できる技術の進歩により、民間のオフィスビルでの木材の採用は、今後も有力な選択肢になっていくと考えられます。

当プロジェクトもまた、木材を使用した事例の1つ。今回、野村不動産様のオフィスビルシリーズ「H¹O(エイチワンオー)」を大阪・梅田茶屋町に建設するプロジェクトが立ち上がり、当社が設計施工会社として選定され、建物の設計を担うこととなりました。「働く人が幸せに生きるWell-beingな環境を提供する」というブランドコンセプトを、バイオフィリックデザインを用いることで実現。人にも、環境にも快適なオフィス空間が完成しました。

information

工事名
茶屋町計画新築工事
所在地
大阪府大阪市北区茶屋町16
用途
事務所
規模
地上8階
建築面積
296.65㎡
延床面積
2187.33㎡

採用技術・サービス

  • BIM検証
  • ZEB
  • BELS
  • 感染症対策

architect

  • 関谷 純の写真

    意匠設計

    関谷

  • 田中 尚生の写真

    構造設計

    田中尚生

  • 大村 和也の写真

    電気設備設計

    大村和也

  • 斉藤 浩一の写真

    機械設備設計

    斉藤浩一

01

chapter

01

プロジェクトアウトライン

人間が本能的に感じる、“自然と結びつきたい” という欲求。それを満たす要素を建築物に取り入れたデザイン手法を「バイオフィリックデザイン」と呼びます。今回のプロジェクトでは、オフィスビルの1〜2階を木造で表現し、リラックスしながらも業務効率の上がるようなオフィス空間を目指しました。

  • 「H¹O」の新たな顔になるオフィス空間を

    野村不動産様のサービス・レンタルオフィス「H¹O」は、過去に渋谷神南のプロジェクトを当社で担当した経緯があり、今回内定をいただきました。渋谷神南でも、 建物外観や屋上テラス、ラウンジ空間などに木材や植物を採用しバイオフィリックデザインをベースに設計デザインを行いましたが、今回はより新しいことにチャレンジしようと検討がスタートしました。

  • 木で構成された空間を演出する “入れ子状” の構造

    当初より、野村不動産様からは木材をより踏み込んだ形で積極的に採り入れたオフィスとしたいとの要望がありました。そのため木材を空間の仕上げ材としてだけでなく、建物を支える構造体としても用いた提案を複数考え提案しました。その中で採用されたのが、今回採用された木造と鉄骨を入れ子状に組んだハイブリッド構造のオフィスでした。
    建物の一部木造化というと、よくあるのは前面ファサードに面する架構に木造を採用する方法ですが、今回は1,2階の一部を木造とし、それを入れ子状に構築するという構造に。
    これにより、鉄骨造のファサード部分を木造化するよりも、室内からも木の柱や梁が見える形になります。建物の構造でありながら、インテリアとしても魅せられるデザインとして、木材をより身近に感じられる空間を実現することができました。

02

chapter

02

性能とデザインの両立を可能にする、効果的な方法を模索して

社内初の、耐火木造建築物の設計となった当プロジェクト。前例がないことで困難を極めましたが、社内外の協力メンバーに意見を求めながら、構造、耐火、不燃の性能をどう担保するか、密に協議・検討していきました。

  • 前例のない耐火木造建築物の設計

    大阪の中心地・梅田にあり、新御堂筋沿いに位置する「H¹O梅田茶屋町」。都市部の高層オフィスは、高水準の耐震性能や防耐火性能が求められ、木造でも鉄骨造やRC造と変わらない強度や耐火性能を実現するための工法を検討する必要がありました。
    特に耐火構造を要する木造建築物の設計は社内で前例がなかったため、木造推進部門のメンバーや、木造部の構造設計パートナーである住友林業様と連携しながら進めていきました。

  • 耐力壁を、効果的な意匠に

    特にエントランスの木造構成は構造、耐火、不燃の高い性能が求められ、大きな課題となっていました。柱と梁だけでは構造上の強度が不足していた為、耐力壁を用いる必要がありました。しかし必要な壁の量が多く単純に使うと人の通るルートを阻害してしまったり、窓からの光を塞いでしまうことになります。そこで二つの耐力壁を貼り合わせ構造性能を倍にした形で間引きながら配置することにしました。これにより人の通るルートと採光の双方を確保した明るい木造の空間をつくることができました。
    耐火については住友林業様の技術、知見を得て認定工法を採用し、不燃についても不燃性の塗料を含侵した木材を採用する等で解決することができました。

p r o j e c t   f l o w

  • 01

    基本計画・
    基本設計

  • 02

    実施設計

  • 03

    新築工事

  • 04

    竣工

  • 05

    モニタリング

03

chapter

03

木造の良さを生かす、
天井計画

パソコンの画面上に建物の立体モデルを表現する「BIM」を用いながら、天井の配線や配管の納まりを検討。
見た目にも美しく整理するために、ディテールまでこだわりました。

  • 美しく整理された配線、
    配管の設計

    今回、ラウンジ部分の天井は「躯体現し」に。通常であれば壁紙や岩綿吸音板などの仕上げ材によって隠されている柱や梁などの構造体を、あえて露出させる方法です。
    現しにすることで、むき出しになった構造体が空間のアクセントになり、天井の高さも上がるため、より開放的な空間をつくることができます。
    その一方で、設備工事においては、通常は仕上げ材の中に隠れて見えない配管や配線を、利用者の方が天井を見上げても違和感のない状態まで整理しながら施工する必要がありました。特に木造で仕上げた部分をよりきれいに見せるため、木造下の配線や配管は避け、配線を上階の床に打ち込んで見えなくしています。また、照明は梁の間に配置しライトアップを行い、木の温かみのある天井面を強調するなど、木造ならではの良さを細部にまで生かすような設計を行いました。

04

chapter

04

既存杭に配慮した杭の設計

既存の杭が埋まったまま、駐車場用地として計画されていた現場。まずは図面を集めるところからはじまり、当時の建物の設計者にコンタクトをとるなど、地道な作業を積み重ねていきました。

  • 当時の図面から、既存杭の位置を推測

    当プロジェクトの建設現場は、既存の建物が撤去されたあとで駐車場用地として使用されており、既存杭が埋まったままの状態でした。設計段階では土を掘って既存杭の位置を確認できないため、当時の図面から杭の位置や長さを予測する必要があり、手持ちの資料では不足していた情報を得るために当時の建物の設計者の方にコンタクトをとるなど地道な作業を積み重ねました。
    アスペクト比の高い建物のため、地震時には上の建物が揺れることで杭に引き抜き力が入りますが、既存の杭を抜いたあとに埋め戻して、そこにまた新規の杭を打つと、元の地盤ほどは引き抜き耐力が出ません。そのため、既存の杭を避けられる杭で、引き抜き力を負担するように杭の配置を調整することで解決しました。

epilogue

「建てる」の粋を超えたチャレンジは、
新たな価値へと繋がる

「0へ挑み、0から挑み、環境と感動を未来へ建て続ける」。東急建設のビジョンとして掲げているスローガンを、当プロジェクトで実感として得られたと振り返るプロジェクトメンバーたち。都市部で木造建築を建てるという試みは、持続可能な社会への貢献に加え、そこで働く人のオフィス環境までを考慮した、新たな価値づくりに繋がりました。

耐火性能を持たせた木造建築物は、社内で初めての事例となったこともあり、年に一度行われる社内の技術発表会では金賞を受賞。さらに木材を用いた空間のデザイン性が評価され、2023年度のウッドデザイン賞を受賞することができました。構造的にも意匠的な観点からも見学者が多く、当プロジェクトへの注目度の高さが伺えます。

アイデアは斬新でありながら、構造的にはシンプル。そういった点から、汎用性の高い工法だと話すメンバーたち。今後あらゆるプロジェクトに生かされることを期待しながら、次なるゼロへ挑み続けます。

o t h e r   c o n t e n t s