#01 Garden Cube 渋谷神南
introduction
コロナ禍以前から、社会に浸透しつつあった「働き方改革」などの影響により、オフィスやテナント入居用の物件に対する市場のニーズはかつての大フロアから中小規模の広さの物件に対するものがより強くなってきました。また、災害などを乗り越えて事業を継続する計画-BCPへの対応も、最新のオフィス・テナント物件に求めたい機能として注目されるようになっています。
今回は、そうした市場のニーズに対応した物件の開発を目指した施主様と、東急建設が密接な関係のもとに理想や想いを共有し、具現化することに成功したプロジェクトを紹介します。
お客様に寄り添い、困難を乗り越えていくのが私たちのスタンスです。
information
- 工事名
- 神南1丁目計画新築工事
- 所在地
- 渋谷区神南1
- 用途
- 事務所・店舗
- 規模
- 地下1階・地上6階
- 施工者
- 東急建設株式会社
- 建築面積
- 463.61㎡
- 延床面積
- 3,134.30㎡
- BCP対応
- BIM検証
- 2回線受電
- 全館LED照明
- 非常用発電機
architect
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意匠設計
大塚聡史
satoshi otsuka -
構造設計
田中祐太郎
yutaro tanaka -
電気設備設計
原田翔平
shohei harada -
機械設備設計
本岡智美
tomomi motooka
※ウィルス感染症への対策を徹底し、撮影・取材を行っております。
chapter
01
プロジェクトアウトライン
渋谷区神南1丁目。2019年9月に着工し、2021年1月に竣工を迎えたビル"Garden Cube渋谷神南"。
設計に関わる制約も、知識や経験、渋谷という知り尽くした街の地の利を活かして「価値」に変えていきました。
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付加価値としての“ガーデン”
当物件は、法律上の制約により、敷地いっぱいに建物を建てることができず、敷地周囲に何らかスペースを設けないといけない状況でした。ならば、そのスペースを建物の付加価値にしてしまおう、ということで緑化が取り入れられました。
実際にエントランス付近や地下エリアの段差には草木が並び、日が落ちるとライトアップと共に物件の周りを彩ります。 -
受託の裏に隠れた
信頼・経験・実績敷地面積793.18㎡、地下1階地上6階建てという、事業主様にとって初の中規模オフィスビルの建設。
案件の受託に成功し、着工に至った要因の一つに、物件の所在が渋谷であり、東急グループは渋谷という街を知り尽くしている、という信頼があったのではないか、とメンバーは振り返ります。
渋谷をはじめとした沿線の都市開発において、東急グループがあらゆるタイプの物件を開発してきた実績、中でも中規模のオフィス・テナントビルにおいては得意分野と言って良いほど経験を積んできたこと。そうした信頼と経験、実績に後押しされる形で、当プロジェクトはスタートしました。

chapter
02
お客様のニーズをくみ取り、施工につなげる
当物件は、以前あった建物の基礎部分と杭を、一部残置しなければならない条件でのスタートでした。
そのため、杭や梁など既存の構造躯体と新設する構造躯体が干渉しないよう、そして完成する建物が充分な強度を持てるよう、緻密な計算のもと、構造を設計していきました。その中で、意匠や設備面で調整を重ねることも多かったといいます。
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事業主の想いを形に
当物件は2か所のドライエリアを持つ、あまり見ない建物ともなっています。傾斜地であることや、地下のスペースをより価値あるものにしたいというニーズから計画されました。その分構造や設備の設計においての難易度は上がりますが、意匠的にもこだわりたいという事業主様の想いを受け止め、実現に向けて取り組みました。
また、配慮する必要があったのが、地下部分がRC造、地上がS造という異なった構造でした。複雑な状態を簡易な納まりにすることには苦労しましたが、施工のしやすさなどにも留意しつつ、設計や施工を計画していきました。 -
渋谷という街にふさわしい
意匠設計を意匠面では、渋谷という街にふさわしいもの、明るくてきれいなものというベーシックな想いはあったものの、具体的な意匠は設計や施工を進めながら、お客様の想いやニーズを一つひとつ具現化していきました。特に建物の顔となるエントランスにはお客様にも強いこだわりがあり、提案は幾度にも及びましたが、想いをすべて受け止め、お客様に満足いただくまで伴走し続ける心持ちで挑みました。立地が渋谷ということもあり、街にとってもモデルとなるような物件を作れるよう、ギリギリまでこだわりました。
p r o j e c t f l o w
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01
基本計画・
基本設計 -
02
実施設計
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03
新築工事
-
04
竣工
chapter
03
求心力のある
プロジェクト体制
当物件は、事業主様とって初の中規模オフィスビル開発となるだけではなく、“BCP配慮型”としても初の取り組みとなりました。
異常気象や大規模災害に直面しても事業を継続できるよう、24時間分の保安電源の確保や異なる系統の2回線から電気を受電するような仕組みを整備。危険への配慮を含めた利用者様への配慮にあたって、プロジェクトで一貫して意識したのは、“快適さ”の向上でした。
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訪れる人々の“快適さ”を求めて
“快適さ”を主軸に、随所に工夫を凝らした当物件。構造では、物件として建築基準法の約1.25倍の強度を持つ他、テナントごとの非常用発電設備や物資の置き場も確保しました。
更に、可能な限り広いスペースを提供できるよう、電気や水道の配管の取り回しにも配慮。その結果、構造以外の設計担当と調整が必要な変更が発生することもありました。ですが、各設計担当が同じ目標を共有したうえで協力できる、そんなプロジェクト体制を背景に、柔軟な対応と、より大きな居住空間作成が可能となりました。事業主様との強い信頼関係に加え、求心力のあるプロジェクト体制が、難しい建設案件を成功に導いたと言えます。
epilogue
『自分たちが創った』
という実感を胸に
かくして、工夫と技術の詰まった中規模オフィスビル-Garden Cube渋谷神南は2021年の1月31日に竣工。現在では入居企業・テナントに利用いただいています。
事業主様からも非常に高い評価をいただくことが出来ている当プロジェクト。プロジェクトスタート時から綿密なディスカッションを重ねていき、プロジェクトを進めながらお客様の要望を柔軟に受け止め、一つひとつ実現していったこともあり、事業主様にも『自分たちが創った』という実感が芽生えたのかもしれません。想いを余さず形にした、という充実感を、プロジェクトメンバーや事業主様といった垣根を超えて分かち合うことができたのではないか。メンバー達は口をそろえて振り返ります。
現状、東急建設では街や施主様の事情に合わせた物件の建設をより得意としており、実績も多く積みかさねているため、技術の引き出しが多く多様なニーズに対しフレキシブルな対応も可能です。事業主さまとしては、今後はZEBやZEH-Mといった省エネ環境対応型の物件開発に取り組む意向をお持ちですが、当社も脱炭素社会の実現に建設技術の⾯から貢献していくことを事業の⽬標に掲げています。今後も、お客様の想いを余すところなく実現すべく、新しい時代にマッチした技術と経験を積み重ねていきたいと考えています。
